設置作業が行われる桟敷席=2017年8月、徳島市内

 徳島市の遠藤彰良市長は21日開いた記者会見で、市観光協会(破産手続き中)が所有していた阿波踊り演舞場の桟敷を、協会の破産管財人から2億1600万円(税込み)で購入すると明らかにした。同日付で管財人の弁護士と売買契約を結んだ。原資として、徳島新聞社が阿波踊り振興のための基金として提案した寄付金を充てるとしている。

 市長らによると、管財人は21日付で徳島地裁に売買の許可を申請した。許可が出た時点で売買契約は成立し、桟敷の所有権は市に移る。市は同日、契約を専決処分した。理由について「旅行会社向けのチケット予約開始が6月1日に迫っているため」と説明した。
市によると、桟敷は有料4カ所、無料2カ所で計約1万6千人を収容できる。購入価格は管財人が今後の阿波踊りのチケット販売による利益などを勘案して決めたという。市長は「公認会計士に相談し、妥当と判断した」と話した。

 協会は3月の地裁の破産開始決定を不服とし、高松高裁に即時抗告を申し立てている。踊り開催に意欲を見せていたことから、4月26日に開かれた夏の踊りの主催団体「阿波おどり実行委員会」の初会合では、委員から桟敷の確保を不安がる声も上がっていた。
市長は「桟敷を取得することで踊り開催についての県内外の不安を払拭し、準備を進めていきたい」と述べた。

 協会は長年の阿波踊りの運営で4億円余りの累積赤字を抱え、管財人が債権回収を進めている。市は赤字の損失補償をしており、桟敷など協会の保有資産を相殺した最終的な負債は市の債務になる。市は管財人から得られた配当の全額を債務の返済に使う考え。残った債務についても全額を今後の阿波踊り運営で返済する方針で、返済に市民の税金は投入しないとしている。

 市観光協会の花野賀胤事務局長は市の専決処分について「破産管財人や弁護士と連絡が取れていないので、コメントはできない」と話した。