徳大教授・奥嶋政嗣氏(交通工学)

 徳島県立ホール前に新駅をつくる―。昨年12月、徳島県の飯泉嘉門知事が唐突に表明した徳島市役所東側のJR牟岐線への新駅設置構想。周辺の渋滞緩和や車を利用しない人のためのアクセス確保が目的だそうだが、徳島駅からホールが建つ市文化センター跡地まではたった650メートルほど。「駅、必要?」と疑問に思う県民は少なくない。一方、新型コロナウイルス禍を受け、JR四国の収益は急激に悪化しており、採算性の悪い牟岐線などの存廃議論が早まる可能性がある。新駅は新たな鉄道需要を生むのか。市中心部にはどんな公共交通の仕組みが求められるのか。専門家の見解を聞いた。

鉄道を守る必要性高い

 ―新駅構想のニュースをどう捉えましたか。

 費用対効果は考えないといけないので、ニーズの調査は必要です。しかし、需要が見込めなくても、地方都市で鉄道を守る必要性は高い。少しでも投資をして便利にしていく考え方は重要でしょう。

 ―県は「鉄道利用を促す効果もある」としていますが、今のJR四国の路線では利用できる人が限られます。どうすれば需要が喚起できますか。

 県内の鉄道は、自動車を運転できない交通弱者しか利用していない状況で、新型コロナの流行前から利用者はこれ以上減らないところまで減っていました。

 公共交通は需要の低下に伴ってサービスを下げてきた。しかしそれにも限界が来て、後は廃線しかない状況でしたが、10年ほど前から全国的にサービスの見直しが進んでいます。JR四国も2019年から牟岐線に30分間隔のパターンダイヤを導入し、分かりやすくしました。バスと鉄道も協力する動きがあります。例えば牟岐線の南小松島駅には、乗り継ぎできるバスが乗り入れています。

 利用者を増やすには、分かりやすいダイヤの導入に加え、鉄道とバスを乗り継ぐとある程度の場所にまでアクセスできるという条件が備わっていることが大切です。ただ、新型コロナ禍で両業界ともダメージを受けており、経営的に立ち直れるか懸念があります。

 ―人口減が進む地域で、公共交通の在り方が手本となる都市はありますか。

 有名な例では次世代路面電車(LRT)を導入している富山市があります。大きな決断をして街の様子が随分変わりました。ただ、富山には新幹線が通っているという徳島との大きな違いがありますが。

 ―徳島県と徳島市にそんな決断ができますか。

 どの程度のスパンで考えるかにもよります。徳島で公共交通の導入を決断しにくいのは、利用者が少ないから。自転車に乗る人も多く、公共交通の利用率は1%程度です。

 ―「車がないと生活できない」という意識や習慣は変わりますか。

 なかなか難しいですが、まずは自動車から降りて自転車に乗るようになれば、公共交通の利用も選択肢に入ってきます。

 また、既にフィンランドなどで導入された(ITを活用してさまざまな交通サービスを利用できるようにする)MaaS(マース)というシステムがあります。スマホにアプリを入れておくと、地域の鉄道やバス、レンタサイクルやタクシーなどを乗り継げる。自宅から最寄り駅やバス停まで、タクシーや自転車で行く仕組みをつくれます。鉄道とバスである程度移動できることが導入の前提になりますが。