徳島県三好市の吉野川を拠点に中高生年代のユースラフティングチーム「TRAKT(トラクト)」の女子が、新型コロナウイルスの影響で延期となった世界選手権(中国)を8月に控え、約1年ぶりに活動を再開した。大学や高校受験のため一時チームを離れたメンバーも復帰。しかしコロナ禍で大会参戦を決断しづらい状況が、進学後の選手活動やチーム編成に陰を落とし、不安を抱えたままの再スタートとなった。

スラロームの練習をするトラクト女子チームのメンバー=三好市池田町の池田湖水際公園

 7日に那賀町鷲敷であった記録会には、受験を終えたメンバーら女子4人で参加。複数のゲートを通過してタイムを競う「スラローム」で阿部雅代監督(42)の指示を受けながらタイムトライアルに挑んだ。

 約1年ぶりの「実戦」に齊藤成美さん(18)=城ノ内高3年=は「久しぶりで楽しかったけど、状況判断が遅くなっていた」と課題を口にした。阿部監督は「体力は落ちていたが、技術的には問題なかった。徐々に感覚を取り戻してくれれば」と今後を見据えた。

 2016年7月、世界選手権優勝経験もある「ザ・リバーフェイス」の主将だった阿部監督らが県内の中高生に呼び掛け、19歳以下のユースチームとして始動したトラクト。女子は17年の世界選手権(三好市)で部門総合4位に入賞したのを皮切りに、選手活動を休止した阿部監督が指揮した19年の全日本選手権(三好市)で優勝。8月の世界選手権出場権を獲得した。

阿部雅代監督(右)の指導を受けるトラクト女子チームのメンバー=三好市池田町の池田湖水際公園

 チームは小中高生5人。うち2人は徳島市から三好市へ毎週末に通い、池田湖を拠点に練習を重ねる。

 通常なら世界選手権が大きなモチベーションとなるが、コロナ禍で選手たちの安全面を考えれば海外大会参戦は即決できない。開催が1年間延びたことで、次の世界選手権が「トラクト女子」として最後の舞台となる選手たちを悩ませる。

 髙井紫乃主将(18)=脇町高3年=は京都の大学へ進学が決まった。ただ新年度からは練習参加が困難になりそう。もちろん大舞台への出場意欲は高いが、進学後の練習環境次第だという。「中学3年から続けてきた集大成として好成績を残したいが、出場するかどうかもまだ決めることができない」と苦しい胸の内を明かす。

 規定では、出場権獲得時のメンバー2人がいれば世界選手権に出場できる。阿部監督は、髙井さんが抜けた場合に備えSNSなどで選手を募ってはいるが、できれば髙井主将や県内の大学進学を選んだ齊藤さんらユースのラスト年代となる2人とともに大会に臨みたいと思っている。しかし「コロナ禍で誰にも無理強いはできない。各自の判断に任せ、出場できれば精いっぱい支援するだけ」と言葉を絞り出す。

 8月15日の世界選手権開幕まであと約4か月。強行参戦すれば選手の健康面が心配だし、辞退すれば「ユースの有終の美」は飾れない。葛藤の中、知恵を絞り力を合わせて再び荒波へ。決断できる日まで、パドルを握る手は緩めない。