試合終了後、笑顔で選手を迎える甲本ヘッドコーチ(中央)=鳴門ポカリスエットスタジアム

 勝利を告げる笛を聞いた甲本ヘッドコーチ(HC)はピッチにひざまずき、万感の思いをかみしめた。監督不在の間、任を授かった重圧。先制しても勝ち切れないもどかしさ。J1に初参戦した7年前もコーチとしてチームを支えながら、ホームで未勝利のまま降格したことへの負い目。異例の事態を言い訳にせず、自分たちを信じて勝ち点3をつかみ、ネガティブな過去を振り払った。

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 「5連敗中の横浜FCに勝てないようでは、この先も厳しい」と見る向きも多かったのではないか。実際、川崎や横浜Mのように鋭くプレスに来るわけでもなく、上位陣との力量差を感じた。互いの持ち味を消そうとする中、雨中のピッチで両者にミスもあった。

 それでも追い付かれた後、追加点を奪った。甲本HCが戦前、選手に伝えた勝利の極意は「得点した後もプレスをかけてラインを上げよう。ボールを後ろ向きに持つのではなく、勇気を持って前に進めていこう」。心身両面で守りに入らなかったことが勝因のようだ。

 開幕から5失点や4失点が続いて9連敗し、10試合目のアウェー戦で初白星を挙げた7年前の戦績は3勝5分け26敗(勝ち点14)。負けても負けても「次こそは」と精魂込めて準備し、そしてまた負ける。そんな日々が続き、取材する側にも「リバウンド・メンタリティー(逆境に打ち勝つ精神力)」が求められた。

 苦い経験を土台に積み上げてきたクラブのスタイルがあり、2度目のJ1シーズンがある。7年前には主力と呼べる県人選手はいなかったが、今は阿波市出身の小西、北島町出身の藤原がピッチで躍動している。そして6戦目で1勝を挙げた。

 「ホーム初勝利がゴールではない」と岩尾主将。J1残留を目指す戦いは、この先もリバウンド・メンタリティーが求められることもあるだろう。ただ、ヴォルティスという名の桜が一輪花を咲かせた喜びが、引き続きチームを応援する力の源となるはずだ。ひとまず、ファン、サポーターの皆さん、おめでとうございます。