促成キュウリを収穫する林部会長=小松島市坂野町

 汗ばむほど暖かいハウスの中で、キュウリがつるを伸ばして青々とした葉を茂らせている。生産者は指先に専用カッターをはめ、長さ約22センチと出荷に適したサイズに育った実を次々と切り取っていく。

 徳島県小松島市では、促成キュウリの収穫が盛んに行われている。JA東とくしま坂野胡瓜(きゅうり)部会の林善弘部会長(51)=同市坂野町=は「春先は気温の変化が大きく、木が疲れやすい。4月に入ればさらに収量が増えるだろう」と話す。

 キュウリは夏野菜の代表格の一つだが、冬から春にかけても西日本を中心にハウスで促成栽培され、年間を通じて出回る。

 県内の促成キュウリは小松島、阿南両市や海部郡などが産地で、出荷時期はおおむね12月~翌6月。県もうかるブランド推進課によると、県内の2019年度のキュウリ生産量7610トンのうち、促成栽培は5460トンを占める。京阪神を中心に出荷されている。特に12月~翌4月は大阪中央卸売市場でシェア1割を占め、宮崎、高知に次ぐ3位となっている。

 小松島市では1940~50年代に、収益性が高いとして、イチゴからの転作が進んで栽培が盛んになったという。現在、JA東とくしまには生産部会が二つあり、坂野胡瓜部会は24戸が加入している。

 病気に強く根の張りがいいカボチャを台木にした接ぎ木の苗を、10月ごろに定植する。重要なのは温度管理。暖房を使って日中は27度になるよう調節する。夜間は真冬でも12度を下回らないよう、温度センサーと暖房器具を連動させて対応する。消費者の購買意欲が高まる年末や、恵方巻きで需要が多い2月などに合わせ、早朝に加温して収量を増やす技術もある。

 JA東とくしまによると促成キュウリは生産量が全国的に減っており、20年ほど前に比べて単価が上がっている。JA東とくしまは2015年に選果設備を一新。新鮮さの目安となる表面のとげが取れにくい方法に変更し、単価の向上と安定につなげた。

 一方で、高齢化による生産者の減少が懸念されている。ハウスや暖房設備の初期投資が大きいことも新規参入を阻む。

 県内各産地は後継者の育成に取り組んでいる。海部郡3町と県、JAかいふは15年に「きゅうりタウン構想」を打ち出し、新規就農者を養成する「海部きゅうり塾」を開講。受講後もハウス整備の補助や営農指導などで支え、新規就農者を増やしている。

 坂野胡瓜部会では30~50代を中心に約10人が「後継者クラブ」を結成し、生産技術を情報交換している。クラブのメンバーでもある林部会長は「部会では親世代のベテランが相談に乗っている。周囲に支えてくれる人がいるのは産地の強みになる」と話している。