定年退職を前に後輩にアドバイスする山田さん=徳島板野署

仕事のノウハウを講義

 徳島県警で初めて本部の捜査1課と捜査2課の課長を務めた徳島板野署前署長の山田利宣さん(60)=19日付で警務部理事官=が3月末に定年退職を迎えるに当たり、これまで培った仕事のノウハウを講義形式で署内の後輩に伝えた。語られたのは通算32年に及ぶ刑事部門での手柄ではなく、警察官の多くが直面する課題とどう向き合うかだった。「『仕事』だからと特別に考える必要はない。普段、家族や友人にしていることの一部を実行すればいい」と、悩む後輩の背中を押した。

 山田さんは徳島工業高校(現徳島科学技術高校)を卒業後、1979年に県警入り。巡査から警視の全階級で刑事部門に所属し、汚職や殺人など重要事件の捜査に携わった。若手時代の下働きに始まり、本部の課長として捜査指揮や組織の運用まで担った。

 「豊富な経験は県警の財産。置き土産がほしい」と楠大助前副署長(50)が伝承を依頼。山田さんは「後輩に伝えたいこと」と題し、2月末まで署内で講義を4回開いた。内容は巡査部長以下の現場向けと警部補以上の幹部向けの二つに分けた。

 現場向けでは、内偵や情報収集で必要となる「協力者」をつくるこつを助言。「仕事だからと難しく構える必要はない。君たちには既に最大の協力者がいる。夫や妻、友人だ。恋人や友人には、まめな連絡や気遣いをしているだろう。その10分の1でも実行できたら、きっと協力者は増える」と呼び掛けた。

 幹部向けでは、捜査を指揮する際の注意点を説明。「ベテランほど専門知識や過去の特異な経験がある。しかし、それに縛られると誤った判断につながることがある。複雑な事件も、まずは基本から始めてほしい」と述べた。

 一連の講義では手柄を立てた事件についての質問も出たが、「語るのに丸3日かかる」と冗談めかして一切触れなかった。「事件に大小はない。被害者はもちろん、容疑者やその家族の生活が大きく変わることがある。その重さを意識しなければならない」と考えているからだ。

 受講した刑事課の角祥徳巡査部長(36)は「第一人者だけに言葉に重みがある半面、『自分もできるかも』と勇気づけられた。先輩の心構えをしっかり受け継ぎたい」と話した。