実験の指導をする難波教授(中)=徳島市の徳島大蔵本キャンパス

 徳島大大学院医歯薬学研究部の難波康祐教授(48)=有機合成化学=らの研究グループが、農耕に適さないアルカリ性の不良土壌でも農作物を正常に育てられる肥料を開発した。イネ科植物の根から分泌されるアミノ酸の一種「ムギネ酸」を基にしており、土壌で分解されるため環境負荷がかからない。アルカリ性の不良土壌は世界の陸地の約3割を占めていることから、研究グループは「農業生産性が向上すれば、世界の食糧問題の解決につながる」としている。

 アルカリ性の不良土壌では、植物の成長に必要な鉄分が水に溶けない状態で存在するため、植物が根から鉄を吸収できず、葉が変色して枯れたり十分に育たなかったりする。難波教授らは、鉄の吸収を手助けするムギネ酸に着目。肥料に活用して不良土壌での農耕を可能にしようと、ムギネ酸と同じ働きをする化合物「プロリンデオキシムギネ酸」を安価に作るのに成功した。

 不良土壌でのイネの栽培試験では、海外で流通している既存の人工肥料より鉄欠乏からの回復効果が高く、コメの収穫が可能であることが示された。愛知製鋼(愛知県)などとの共同研究で、10日付で英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

 今後は大量生産に向けて合成方法の改良などを行い、10年以内の実用化を目指す。難波教授は「一日も早く実用化し、化学の力を使って豊かな世界を実現させたい」と話している。