多くの家族連れが集まった子ども食堂のイベント。学生ボランティアがステージを盛り上げ、子どもと遊んだ=2月27日、徳島市のクレエール

 NPO法人クレエールの拠点は、新町川に面した徳島市の万代中央埠頭(ふとう)にある。広々とした貸し倉庫でレストランを営み、ステージや遊び場も備える。無料や安価で食事を振る舞う「子ども食堂」を平日は毎日開き、第4土曜日にはイベントを催す。

 「子どもたちがすっごくうれしそう」。2月の子ども食堂のイベントに、幼子2人を連れてきた徳島市の女性(35)は明るい表情を見せた。子育て世帯に食べ物を届ける「こども宅食」がきっかけでクレエールとつながり、理事長の原田昭仁(60)に誘われた。

 女性はひとり親で、昨夏に勤め先の小売店を離職した。新型コロナウイルスの感染拡大でシフトが減ったのに加え、人との接触が避けられない職場だったからだ。子どもの体が弱く、うつしてしまわないか不安だった。

 催しへの参加はこの日が2回目。子どもたちはカレーライスを平らげ、学生ボランティアと工作や人形遊びを楽しんだ。育児や家事から解放されるひととき。女性は「ここに来れば、身も心も楽になれる」と話した。

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 クレエールは2018年7月に徳島市昭和町で子ども食堂を始め、20年6月に万代中央埠頭に移転した。新型コロナの影響で一時休業を余儀なくされた際も、持ち帰り式に切り替えるなど工夫を凝らしてきた。

 これまでの利用者はボランティアも含めて延べ1万8千人。女性のように、宅食を機に足を運ぶようになった親子は20組を超える。子どものおなかを満たすだけでなく、今では多様な人が集う交流の場となっている。

 そんな子ども食堂で調理や接客に当たるのは、クレエールで働く障害者のメンバーだ。

 手足に障害がある竹谷慎子=同市八万町千鳥=は来客の受け付けや案内を担う。絵が上手で、人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃」のイラストもさらさらと描く。玄関に飾っていると「あ、炭治郎!」とキャラクターの名を口にする子もいて、会話のきっかけになる。

 竹谷は19年にクレエールで働くようになるまで、子どもが苦手だった。以前、関節が曲がった竹谷の手を見た児童が「あの人、どうしたん?」と親に尋ねるのが聞こえた。子どもは率直にものを言う。じろじろ見られるのも嫌だった。

 だが、ここで多くの子と触れ合ううちに、自然と気にならなくなった。今では「かわいくてしょうがない。随分変わったなぁ」。

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 子ども食堂の代金は、生活に余裕のある大人にのみ負担してもらっている。運営を支えているのは、県民や企業からの寄付だ。

 やます鈴栄青果(徳島市)はその一つで、開設当初から野菜や果物を毎日提供している。鈴栄順治社長(57)は「子どもの頃、貧乏したからね。困った人を助けるのは当たり前。障害がある人の励みにもなるなら、なおうれしい」と話した。

 他にも子どもの散髪を申し出る理容師、紙芝居や手品などでイベントを盛り上げるボランティアもいる。原田は「みんな『何もできんけど』と言いながら寄付や奉仕をしてくれる。でも中身より、本当はその気持ちに支えられている」。

 障害者の就労支援が目的のNPOが、なぜ子ども食堂の運営に熱心なのか。理由は、クレエールの原点にある。=敬称略

 子ども食堂の3月のイベントは27日午前10時~午後2時に開く。ボランティアによる歌やダンスなど多彩なステージイベントを披露。工作やスーパーボールすくいも楽しめる。問い合わせはクレエール<電088(654)5205>。