昨年4月に新設された「ゼロ・ウェイストセンター」。紙だけで9種類に分別する=上勝町福原

 徳島県上勝町長選が4月6日に告示される。現時点で出馬を表明しているのは、現職で3期目を目指す花本靖氏(63)=旭=と、町の第三セクター・もくさん元社長の新田勝憲(かつのり)氏(71)=福原=の2人で、一騎打ちとなる公算が大きい。選挙戦を前に、町の課題を探る。

 住民が45種類ものごみ分別を実践し、リサイクル率が80%を超える上勝町は、全国屈指の環境先進地として知られる。温室効果ガスの削減などが社会問題となる中、世界中から毎年約2千人の視察者が町を訪れる。

 45分別をはじめとするゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)活動は町の看板施策。だが高齢化が進む中、続けられるか不安を抱えている住民は少なくない。ある50代女性は月1回、町内で暮らす両親の家を訪れ、大量のごみを車で持ち帰る。手間のかかる分別作業を代わりに行うためだ。「父と母はそれぞれ95歳と85歳。視力と体力が低下している高齢者にとって、細かい作業は大きな負担」と女性は言う。

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 町では紙の種類やビンの色、容器の汚れ具合などを細かく区別する。ちょっとしたごみを捨てるだけでも労力と時間が必要だ。町の高齢化率は50%を超える。自力で家庭ごみを分別して収集所まで運ぶことができない世帯が増えつつある。

 女性は「将来的には多くの町民が、ごみを捨てられなくなるのではないか。分別と収集を支援する仕組みが必要だ」と訴える。

 町では車を持っていない世帯などを対象として2カ月に1回、町職員が自宅を訪れてごみを回収する支援事業を行っている。町内767世帯のうち48世帯が利用しており、町が2014年に実施したアンケートでは、利用者の61・9%が回収の頻度に満足していると回答した。

 町企画環境課は、ごみ捨てのルールを変える方針は現時点ではないとしながらも「7年前の調査なので、再度住民の意見を聞く必要性はある」としている。

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 約5億6千万円をかけて昨年4月に新設した町内唯一のごみ収集所「ゼロ・ウェイストセンター」をどう活用するかも注目される。視察者らが宿泊できるホテルやシェアオフィスといった施設は町内企業の「ビッグアイカンパニー」が管理を受託しており、利用料の一部は町に還元される。町は新たな財源として期待していたが、新型コロナウイルスの影響で出ばなをくじかれた。20年度の収支は赤字になる見込みだ。

 同社の小林篤司社長は「日本が脱炭素社会の目標を掲げてから、環境問題に取り組む企業が増えている。積極的にアプローチし、コロナ収束後に多くの団体や個人を誘致したい」と話す。

 町が昨年12月に示した第2期ゼロ・ウェイスト宣言では、企業や大学との共同研究、視察受け入れ態勢の充実を掲げた。センターを核とする交流は町の重要課題と言える。1990年代以降、町は環境問題のモデル地域としてリードし続けてきた。だが高齢化やコロナの影響が行く手を阻む。営々と築いてきた「ごみゼロの精神」をいかに受け継ぐか、リーダーの手腕が問われる。