中高生からプロまで、多くのスポーツ選手を診察してきたドクターG(爺)=整形外科医、柏口新二医師(徳島市)=が、筋トレの基本について解説する。

 ―ママ コロナ禍によるステイホームで、空前の筋トレブーム。いろいろな種類があって迷います。

 ドクターG 本物と偽物のトレーニングがあるわけではありませんが、トレーニングの本道(本幹)と枝葉の区別はあります。ビジネスとして指導している方の中にはメディアの「人気取り」や「受け狙い」から枝葉末節の手法を強調していることがあります。

 体作りの体操としては、NHKで古くからやっているラジオ体操は無駄や無理の無い至高のトレーニングの一つです。最近では近畿大学理工学部の谷本道哉先生がやっている筋肉体操も青少年向けのトレーニング(以下Tr.)としては優れたものだと思います。学校の体育の授業に取り入れても良い内容です。

 ―ママ ラグビーをしている高校生の息子がバーベルやマシンを使ったTr.をしていますが、何をどうすればいいか分からず、がむしゃらに頑張って膝が痛くなったそうです。

 ドクターG 近年はTr.の雑誌もたくさん出ているので、そういうものを参考にしてもよいです。ただ商業ベースの雑誌は目新しい手法を強調して読者にこびた内容になってしまいがちで、初心者には不親切になりがちです。そのために私たちは「筋力強化の教科書基本を極める」という初心者向けの教本を東京大学出版会から出しました。筋肉生理学の石井直方先生、福岡ソフトバンクホークスのストレングスコーチの高西文利先生、そしてスポーツ医として私が分筆しています。

 年齢にもよりますが、高校生以上ならスクワット(SW)、ベンチプレス(BP)、デッドリフト(DL)のビッグ3がTr.の基本になります。中学生ならBPを腕立て伏せ、DLを懸垂に変えて行うとよいでしょう。

 ―ママ そんな簡単なTr.でいいのですか。

 ドクターG 腕立て伏せは身体を一直線に保ち、胸が床に付くまで下ろします。体をくねらせたり、お尻を上下させたりしてはダメです。懸垂は肩幅よりやや広く、逆手ではなく順手で握ります。腕で身体を引き上げるのではなく、肩甲骨を背中の中央に引き寄せながら胸がバーにつくような気持ちで引き上げます。結構きついですよ。

 ―ママ プロ野球の投手がゴムチューブを使って肩のインナー・マッスルを鍛えているのを見て、小学生の息子にも毎日やらせています。良いことですか。

 ドクターG 高校生になって肩を痛めた時に役立つので無意味ではありません。ただ小学生や中学生が予防的に、あるいは強化を目的にチューブトレーニングをするのなら無意味です。あれはリハビリ手法の一つで、病的な状態から抜け出す時に使うものです。健全な状態なら、ビッグ3で体の中心にある筋肉を強化するべきです。

 ―ママ 「体の中心を鍛える」なら体幹に特化したコア・トレーニングが良いのではないですか。

 ドクターG コア・トレーニングも病的な状態から脱する時に使うリハビリの手法です。健全な状態なら従来行われている腹筋や背筋の強化でいいし、SWやDLは最高のコア・トレーニングです。不安定板やボールを使った不安定トレーニングなどもケガをしやすく、むしろ避けるべき。楽して強化はできません。

 ―ママ 楽といえば、スロートレーニングも?。

 ドクターG スロトレは3~4秒かけてしゃがみ、1~2秒で立ちます。真剣に10回行うと結構きついです。”楽々トレーニング“という言葉には「きついトレーニングを前向きに楽しむ」「やり終えた後の爽快感を楽しむ」という意味が入っています。

 ―ママ 私たちの持つ知識には偏りや誤りがあったのだと気づきました。トレーニングの本道を学ぶ必要があるのですね。また機会があればお話を聞かせてください。