徳島弁護士会の永本能子弁護士

 刑法の性犯罪規定が実情に合っているかどうかを検討する法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」の議論が、最終局面を迎えている。現状の規定は何が問題とされ、どのように変更すれば被害者の立場に寄り添う形になるのか。性暴力やドメスティックバイオレンス(DV)事案など、女性からの相談を多く受けている徳島弁護士会の永本能子弁護士に聞いた。

 ―刑法の性犯罪規定は2017年、110年ぶりに改正された。

 「強姦(ごうかん)罪」は強制性交等罪となって厳罰化されたが、ここには暴行・脅迫要件が残っている。強制性交等罪における暴行・脅迫は「被害者の抵抗を著しく困難にする」程度でなければならないとされている。刑法の中で最も程度が強い「最狭義の暴行」が必要とされ、罪を成立させるためのハードルは非常に高い。このため、被害を訴え出ても不起訴となるケースが目立つ。

 ―17年の改正では「監護者」の立場を利用して18歳以下に性行為をした場合、暴行や脅迫がなくても罰せられる「監護者性交等罪」も新設された。

 監護者は実父や養父ら「現に監護する者」に限られる。例えばスポーツを指導するコーチは試合出場メンバーの決定権を握るなど権力を持ち、子どもの体に接触する機会も多い。加害しやすく被害側は言い出しづらい構図があるにもかかわらず、対象外となる。生活の面倒をみる家族だけでなく、パワーバランスがある関係間に対象を広げるべきだと思う。

 ―現行法の問題点は。

 被害者は暴行や脅迫がなくても頭が真っ白になったり驚いて体が固まったりし、抵抗できない状態に陥ることがしばしばある。こうした状況下では加害者の「同意があったと勘違いした」という主張が認められてしまい、無罪になるケースも。性犯罪は加害者が顔見知りである場合が多いが、親しい間柄にこそ「故意」の立証は難しい。

 また、性犯罪は上司と部下、採用担当者と就活生など、上下関係がある間で起こることが多い。被害者が陥りやすい心理的反応や、力関係により抵抗しづらい状況に追い込まれる場合が多いという実態を無視した法設計になっている。

 ―今後、どのような見直しが必要なのか。

 財産犯なら意に反して盗む「窃盗」、畏怖により奪う「恐喝」、暴行・脅迫が伴う「強盗」など、強制性の程度に応じた罪名がある。性犯罪も「同意なく性交した」「立場や相手の恐怖心を利用して性交した」などを要件とし、強制性交等罪より成立要件のハードルを下げた罪を設けるべきではないか。性的同意年齢(法的に性行為に同意する能力があるとされる下限)が13歳というのも低過ぎる。義務教育を終えた16歳程度に引き上げるなど、見直す必要がある。