シオマネキがすむ吉野川河口で干潟への思いを語る立石さん=徳島市

 物心つく前、赤ん坊の時から親に連れられて来ていたというから、もう干潟観察歴16年になる。もはやベテランだ。観察会では、子どもたちにはもちろん、大人にも干潟の面白さを解説できる。

 城南高応用数理科1年の立石慧悟さん(16)にとって、吉野川の河口干潟は格好の遊び場だった。実に多様な生物がすむが、その代表格が、雄の片方のはさみが大きい特徴で知られるカニのシオマネキだ。環境省や徳島県のレッドデータブックによると絶滅が危惧されているが、そうは思えないほど、春から秋に吉野川河口に足を運べば、普通に出合える。知らないという友人を連れて行ったこともある。

 高校に進学し、シオマネキのことをもっと知りたいと思う欲求がさらに高まった。2020年8月、新型コロナウイルス禍の影響で短かった夏休みのある日、気温が40度はあろうかという炎天下、父聡明さん(55)と共に干潟にいた。

 500グラム、1キロ、2キロの泥を詰めたビニール袋を50センチ、1メートル、2メートルの高さからどすん、どすんと落とし続けた。「シオマネキは何に反応して逃げるのか」をテーマにした夏休みの自由研究に取り組む風景だった。

 なぜ、このテーマを? 浮かんだ疑問をぶつけると「観察会に来た人にシオマネキを捕まえて見せてあげようとしてもすっと穴に隠れる。何に反応しているのかが分かれば、捕まえやすくなると思って」との答えが返ってきた。

 穴に逃げ込む条件は音か震動か物影か。そう仮説を立てて実験した。重たい袋を高い所から落とした方が逃げる個体が多い傾向はあったが、それ以上に明確なのは物影だった。干潟上に二つ立てた三脚の間に滑車を付けた棒を置き、さっと黒い布を引き上げる実験では周囲の全ての個体が身を隠した。段ボールで作った筒の中を重りを落とし、影を見えなくする実験では、すぐそばにいる個体が反応しないケースもあり、「音や震動よりも物影が影響している」と結論づけた。

 2月に徳島市で開かれた吉野川河口の環境保護を考える「世界湿地の日2021 吉野川のつどい」で発表機会があり、約30人を前に結果を伝えると、称賛する感想が次々寄せられた。

 2年生になると、同級生とチームを組んで課題研究に臨む。既にテーマは決めている。シオマネキの雄は大きなはさみを振り興味を引こうとする求愛行動を取るが、雌をどう認識しているのか、だ。視覚なのか、何らかのフェロモンか。研究の仲間づくりももう終えている。

 シオマネキはその格好良さや、幼い時の鮮やかな青さなどから「別格の存在」と言うが、他の生物への関心も高い。「これはカワザンショウ(貝の一種)の仲間。サンショウの実ほどの大きさなのでこの名前。クリイロカワザンショウ、ツブカワザンショウなど、いろいろいて、見分けるのは難易度がすごい高い」「フトヘナタリ(貝の一種)は成長すると貝殻の先が割れる。けど生きている」「トビハゼ(魚の一種)はレーザーポインターで緑の光を当てるとなぜか飛びついてくる」・・・。干潟への思いが言葉からどんどんあふれてくる。

 全国に誇れる豊かな自然が残る干潟なのに、同級生や大人もあまり知らないのが残念でならない。「知れば知るほど、この徳島だけの特別感を味わえる。干潟には水質の浄化作用や渡り鳥の休息地などの役割もある。多くの人が干潟に関わることが守ることにもつながる」と話す。

 将来の目標は「やっぱり生き物と関わる仕事を選びたい」。迷いなく、そう答えた。