鉄道が慢性的な赤字のJR四国は、非鉄道分野に活路を見いだそうとしている。国鉄時代からパンの製造販売などに取り組んでいたが、民営化後に新規事業に数多く参入した。
だが、同社の事業開発本部によると、まずまずの業績を残しているのは学習支援ソフト開発販売とホテル、通販、うどん店くらいで失敗の方が多い。その中でも大きな痛手となったのは、同社の関連会社が中心となり、香川県さぬき市に開発した住宅団地オレンジタウンだ。
高松駅から高徳線の特急で18分。団地名を冠したオレンジタウン駅で降りて坂を上ると、110億円を投じて造成した宅地42ヘクタールが広がる。1998年の発売から19年たつが、売れたのは全682区画の3分の1の約220区画にとどまる。
需要の少ない所に造成したことが失敗の原因とされる。そもそも開発のきっかけは高徳線の高速化で、列車行き違いのための停車場が必要になり、それが駅と住宅団地を造る計画に発展。景気低迷の中で計画を推し進めてしまった。
2004年に鳴り物入りで発売したスープ事業も空振りに終わった。1億6千万円を投資して高松市に専用の工場を建設し、四国の農畜産物や海産物を食材に使ったスープを売り出した。
添加物を使わない本物志向の品質が売りで、首都圏や関西の高級スーパーなどに売り込みを図ったが、販売不振のため11年に撤退を余儀なくされた。
このほか、キャンプ場運営、釣り船運航、コンビニ運営なども採算の悪化で撤退した。いずれも十分な収支分析をせずに立ち上げたのが原因だ。
松木裕之常務・事業開発本部長は「スープ事業は、売れるかどうかの見極めができていなかった。こうした過去に学び、二度と失敗しないという意識を徹底する」と強調する。
最近、力を入れているのがマンション事業。昨年、大阪市の開発業者と提携し、16年ぶりに再参入した。高松市で社宅跡地に建設、分譲した地上9階建て・101戸の物件は現時点でほぼ完売、両社に計30億円の売り上げをもたらした。
JR四国は社宅跡地など遊休地を6ヘクタール所有している。自ら運用した方が収益率は高いが、オレンジタウンの失敗を教訓に、現時点では提携先のノウハウを学びながら確実に利益を上げる手法を選択している。
18年12月の完成を目指し、兵庫県姫路市で建設中の分譲マンションにも事業参画した。自社の土地ではないものの事業費の20%に相当する11億円を負担。社員1人を現地に派遣して初の四国外進出となった。
同社は12年度に策定した中期経営計画で、20年度の鉄道運輸収入を16年度の233億円より2%少ない228億円と見積もる。一方、非鉄道の年間売り上げを16年度の52億5千万円から20年度に74億円とする目標を掲げ、マンション販売やホテル運営などを基幹事業に成長させるとしている。人口減が全国に先駆けて進む四国の路線の命運は、鉄道以外の事業に懸かっている。
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