徳島駅周辺の鉄道高架事業は、佐古駅周辺が1993年に高架に切り替えられた後、進んでいない。
早期事業着手を目指す県が徳島駅周辺を後回しにする分割案を主張する一方、徳島市が全区間一括での都市計画決定を目指す方針を示すなど、県市の折り合いがつかず、展望は開けない。
JR四国は、鉄道高架を推進したい立場だ。踏切がなくなると安全性が高まり、速度向上につながる可能性もある。また駅前が活性化すれば乗客が増加し、駅ビルの商業施設の集客力も高まる。
鉄道高架は県、まちづくりは徳島市が中心となって推進する。ただ、鉄道高架に関しては、JR四国も負担しなければならない。県によると、高架の事業費は概算で500億円に上り、負担額は国220億円、県115億円、市115億円、JR四国50億円となっている。厳しい経営環境下、投じた資金を回収するには、駅前を活性化し、乗客増につなげることが求められる。
さらに、高架に伴い徳島駅にある車両基地を市南部に移転する計画もある。車両を回送する費用が増大するだけに、なおさら乗客増を図る必要がある。
だが、徳島市が2010年に策定したまちづくり計画案には、広場などの整備方針しかなく、JR四国の担当者を失望させた。13年度には県を通じて徳島市に見直しを求めた。
そんな中、16年4月に徳島市長が交代し、状況に変化が見え始めた。市は、まちづくり計画案の見直しに着手したほか、新ホールを徳島駅西のJR四国などが所有する土地に建設する方針を決めた。
半井(はんい)真司社長は記者会見で「できるだけ協力したい」と歓迎の意を示しながらも「ホールだけでは厳しい。城山側をどうするかも含めて検討が必要だ」と一層のにぎわいづくりの必要性を指摘した。
徳島の事業が停滞している間に、他県では高架が進んだ。高知駅は08年に建て替えられ、周辺の4・1キロが高架となり11カ所の踏切を撤去。駅北側は「よさこい咲(さい)都(と)」として再開発され、新しく国の合同庁舎やドラッグストアなどが建った。
松山駅は08年度から事業が始まり、24年度に完成する予定。2・4キロが高架化され、車両基地・貨物駅が移転し、その跡地で土地区画整理事業が行われる。
高松駅は高架ではないが、01年に建て替えられた。全ての路線が駅で行き止まりになっている特徴を生かし、平面でホームから外まで段差のない造りにしている。
このほか、徳島駅周辺とほぼ同時に事業着手した香川県の坂出駅と丸亀駅、愛媛県の今治駅付近の高架事業も既に完成している。
大きく遅れた徳島駅の高架事業が動き出すかどうか。JR四国は、徳島市と県の動きを注意深く見守っている。
=おわり
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後日、インタビュー編を掲載します。
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