昨年11月に開かれた阿波踊りイベント。今夏の開催に向けた運営体制は白紙状態だ=徳島市の藍場浜公園

 3月31日に解散した阿波おどり実行委員会は、踊り事業の運営業務を担っていた民間3社共同事業体との委託契約も同日付で解除した。「何も知らされておらず、あぜんとしている。不信感しかない」。事業体総責任者の前田三郎キョードー東京取締役は憤った。

 実行委は踊り事業の赤字を市の税金で補塡(ほてん)する仕組みを改めようと、2019年度に民間委託方式を導入。同年4月、キョードー東京(東京)キョードーファクトリー(同)ネオビエント(北島町)で構成する事業体と契約を結び、運営のかじ取りを託した。

 その1年後、徳島市長選で初当選した内藤佐和子市長が実行委員長に就任すると、「市、実行委」と「事業体」の間に隙間風が吹き始めた。

 昨年11月、実行委が市内で開いた踊りイベントは、事業計画案を事務局の市が策定。主だって運営に関わったのはネオビエントのみだった。中止となった昨夏の踊りの経費負担を巡っても、事務局は事業体の要求を一切拒否した。

 その「溝」が表面化したのは、今年2月25日に開かれた実行委会合。今夏の阿波踊りの方向性を示す重要な場に、事務局は事業体の出席を求めていなかった。「事業体外し」ともとれる動きに、委員からは批判の声が上がった。

 そして3月31日。実行委は事業体が昨年分の固定納付金500万円を納めていないことなどが「業務不履行に当たる」として、期間途中での契約解除を発表した。

 踊り手の中には、事業体による運営を懸念する声が根強くあった。連長経験のある男性(77)は、今回の市のやり方には批判的だが「地元のお祭りを都会のイベント会社が運営するのは正直どうだろうかとの思いはある」と言う。「市長は地元団体が中心となった運営体制に戻そうとしているのではないか」(踊り関係者)との声も聞こえる。

 民間委託方式を導入したのは、踊り事業に民間のアイデアやノウハウを取り入れ、活性化させようとの狙いがあった。事業体は19年夏の踊りを運営した経験を基に「市役所前演舞場を観光バス乗降所に変更」「開催時間の前倒し」といった改革案を作るなど、踊りの変革に取り組んでいた。

 「怒りを通り越してあきれている」(ネオビエントの藍原理津子社長)とする事業体は今月12日に会見を開き、市との契約について経緯を明らかにする方針だ。

 「何としてでも開催することで、次の世代に受け継いでいきたい」。内藤市長は3月31日、こうコメントを出したものの、今後の運営体制や事業計画には全く触れなかった。あるベテラン連長は「不安しかない。今までのように楽しく踊れない」とこぼす。

 地方自治に詳しい鳴門教育大の山本準客員教授(社会学)は「事業体との協議もなく、一方的に契約解除をするのは行政として乱暴だ」と強調。市長が交代するたびに混乱が起きる現状に「市はきちんと問題を検証し、市民に説明を尽くしてから次のステップに進むべきだろう」と指摘する。