筆者の取材経験から言うと、不祥事の謝罪会見には、怒りやあきれといった負の感情が往々にして付きまとう。だが一昨日の会見は見ていてただただ痛々しかった

 アメリカンフットボールで悪質な反則プレーをした日本大の選手。当時の監督の指示だったと明かしたが、短絡的な行為である。やってしまったことの結果は重大で、決して許されるものではない

 それでも、彼が受けた指示は不快極まりない内容だった。「相手をつぶすのなら試合に出してやる」。その前後には「日本代表を辞退しろ」「坊主(頭)にしてこい」とも迫られたという

 「精神的に追い詰められていた」と加害選手。違反行為をしないという選択肢はなかった、と悔やんだ。指示の言葉が催眠暗示のようになっていたのか。もしそうなら空恐ろしい

 実のところ、会見でここまで真相を話したのは意外だった。反則行為に遭った選手側が警察に被害届を提出していたから。「刑事訴追の恐れがあるので」。森友学園問題に関する国会の証人喚問で、捜査への影響を理由に肝心な証言がことごとく拒否されたのは、記憶に新しい

 加害選手も恐れの立場は同じである。真面目に語られる真実は、硬質な説得力を持つ。「自分の意志に反することはすべきではない、と思う」。潔く訴えた20歳の姿勢に学ぶべきは、何か。