前半24分、徳島の岸本が自らのヘディングシュートのこぼれ球に反応し先制ゴールを決める=鳴門ポカリスエットスタジアム

 運を持っていた。いや、引き寄せたと言うべきか。前半23分から3本連続でCKを獲得。1本目も2本目も岸本が枠内に飛ばしたヘディングシュートは相手守備陣にかき出された。「次も俺に飛んで来い」。3本目。願い通りに飛んできたボールをまたも頭でヒットし、GKがはじいた球を右足で押し込んだ。岸本は「憲君(岩尾)がいいボールを蹴ってくれた」と笑顔でヒーローインタビューに答えた。

 セットプレーでもぎ取った虎の子の1点は、岸本の執念だけによるものではなかった。仙台がマンツーマンでセットプレーを守る際、岸本のマークに付くDFが弱いとチームはしたたかに分析していた。そこを狙った岩尾のキックを仙台の手倉森監督も「3回ともそこに合わせて精度高く蹴ってきた」と脱帽した。

 アップ中にセンターバックの石井が違和感を訴え、左サイドバックに入る予定だった田向を真ん中に、ジエゴを左に据えた。トラブルに見舞われた上に、疲れもあってかうまくボールを回せない。仙台に左サイドから押し込まれる時間が長かった。「イメージ通りにボールを動かすのが難しかった。こういう時こそ後ろがしっかり締めようと、細かく声を掛けた」とGK上福元。守護神は後半39分に見せた決定機阻止のほか、ポジティブなコーチングを絶やさず、助け合いの精神をチームに徹底させた。

 これでJ1ホーム初勝利を挙げてから3連勝。シーズンを通して3勝しかできなかった7年前の数字に早くも並んだ。無敗の首位川崎には力の差を感じさせられたが、その経験も糧にチームは試合ごとに伸びている。その代表格がヒーロー岸本だ。甲本ヘッドコーチも「彼は覚悟を持って取り組み、J1仕様の選手になってきている」と評し、偶然ではない必然の活躍と太鼓判を押す。

 中3日で迎える次戦の相手はロドリゲス監督が率いる浦和。岸本は「お世話になったからこそ勝ちたい」。われらが徳島が上昇のスパイラルを描きながら因縁のあるビッグクラブに挑む。舞台は整った。