まんさくの花が咲く寂庵で笑顔を見せる瀬戸内寂聴さん=京都・嵯峨野

 5月に99歳になる徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの文学特別展「寂聴の愛する古典の女たち」が4月10日~5月23日、徳島市の県立文学書道館で開かれる。「源氏物語」を現代語訳し、源氏ブームを巻き起こした寂聴さんがお気に入りの登場人物らを取り上げ、魅力に迫る。併催される「寂庵の庭とゆかりの人々」では、四季折々に花を咲かせる木を贈ってくれた友人らとの縁をパネル写真などで振り返る。

 寂聴さんは、県立徳島高等女学校時代にさまざまな古典に親しみ、作家になってからも登場する女性たちの小説化を数多く手掛けてきた。源氏物語は、その中でも別格で、70歳の時に現代語訳に命懸けで取りかかり、6年間かけて全10巻の刊行を成し遂げた大作だ。

 源氏物語のうち特別展で取り上げられるのは、六条御息所、朧月夜、女三宮、明石、浮舟の5人。

 六条御息所は、源氏物語の中で寂聴さんが一番好きな女性だという。若い光源氏の激しい情熱に負けてしまった瞬間から、深い悩みと苦しさを味わわなければならなかった六条御息所。強い嫉妬から、源氏の正妻の葵の上に生き霊となって取りつく。寂聴さんはこの辺りの紫式部の筆の冴えは素晴らしく、圧巻だと絶賛している。

 パネルで女性たちの魅力を紹介するほか、土佐光起筆「紫式部図」(石山寺蔵)も展示される。

 この他、額田王(万葉集)後深草院二条(とはずがたり)和泉式部(和泉式部日記)道綱の母(蜻蛉日記)虫めづる姫君(堤中納言物語)が紹介される。

 一方、「寂庵の庭とゆかりの人々」は、1974年に京都・嵯峨野に結ばれた寂庵の変遷と、そこに息づく追憶が分かる内容となっている。

 51歳で出家し、翌年に完成した寂庵。友人や知人がお祝いに木の苗や花の種を持ち寄り、好きな場所に植えていった。

 担当編集者の思い出の「まんさく」、5歳年上の姉艶が贈ってくれた牡丹、社会主義者荒畑寒村がくれた蠟梅・・・。今ではそれらの木は大きく育ち、大きな森のようになっている。

 四季折々の移ろいがその後の寂聴さんを慰め、文学を書き続ける生命力を与えてくれた。あれから50年近く、その木を持ってきてくれたほとんどの人が故人となってしまった。懐かしい人々の分身とも言える寂庵の木や花。写真パネルを見ると、寂聴さんの広い交流にも思いをはせることができる。

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 関連行事として5月15日午後2時から、井上荒野さんの講演会「今、作家であるということ」がある。申し込みが必要。問い合わせは文学書道館、電話088(625)7485。