徳島市の西新町商店街。人通りはほとんどなく、シャッターを下ろしたままの店舗が目立つ

 徳島市が新町西地区再開発事業を白紙撤回してから5年。地権者でつくる再開発組合が起こした損害賠償訴訟の控訴審は8日、組合と市との和解が成立し、ようやく一区切りとなった。ただ、市の方針転換の影響は大きく、新町西地区のまちづくりは停滞している。政争に翻弄された地元商店主らは「和解になって良かったが、失った時間は戻ってこない」と複雑な思いを口にした。

 音楽・芸術ホールを中核施設とした再開発事業は着工寸前まで進んでいた。ところが、白紙撤回を訴えた遠藤彰良前市長が2016年3月の市長選で当選。市は方針転換したものの、代替事業を提案せず、20年5月の徳島地裁判決では「不法行為」と認定された。複数の地権者は「事業を政争の具にされたのが一番残念」と口をそろえる。

 事業の白紙撤回以降、新町西地区のまちづくりは進まなかった。徳島駅に近いにもかかわらず、今は休日でも人通りはまばら。店舗は老朽化し、下ろされたままのシャッターも目立つ。商店主の50代男性は「ホールが予定通り建っていれば変わっていたのだろう。市に振り回されて住民は疲弊している」と言う。

 市は21年度、まちづくりで国の補助金などの支援が受けられる「中心市街地活性化基本計画」を策定する。内藤佐和子市長は2月の記者会見で「計画策定の中で、西新町と東新町は重要な地域だ」と強調した。

 「そもそも再開発事業は寂れた街をなんとかしたいという思いで、市に応じてやってきた」。商店主の60代男性はこう振り返り「生まれ育った土地ににぎわいを取り戻したいという気持ちはある。より良いまちづくりに協力したい」と語った。