徳島市の内藤佐和子市長が昨年4月に阿波おどり実行委員長に就いて1年足らずで、実行委の解散、民間3社共同事業体との業務委託契約の解除に至った。舞台裏で何が起きていたのか。関係者の証言を集めると、「事業体外し」へと突き進む、市の独断専行ぶりが浮かび上がってきた。

 「事務局は信用できない」。2月25日の実行委の会合で委員の一人が、市長と事務局の市に対し不満をぶちまけた。この言葉は、委員の総意と言っていいだろう。

 不信が決定的となったのは、新型コロナウイルス感染拡大で中止した昨夏の阿波踊りに関する開催準備費用の負担などを巡る市の対応だ。約2100万円の費用分担や年間500万円の納付金の免除を求める事業体と、これを拒む市との対立が深刻化していることを、委員が知ったのは1月22日付の新聞報道だった。前日に実行委の会合があったにもかかわらず、市からは何の説明もなかった。

 それまでも委員は再三、事業体を会合に呼ぶよう求めたが市は応じていない。この問題の経過もほとんど聞かされておらず、委員が憤慨するのも無理はない。

 対立が明るみに出た後の2月25日の会合では、市は「赤字補塡はできない」の一点張り。事業体と実行委の協議すら認めなかった。

 そこで委員の一人は、昨夏の踊り中止が不可抗力ではなかったことを裏付ける必要性を主張している。実行委と事業体が交わした基本契約には「不可抗力で事業体に損害・損失や増加費用が生じた場合は、実行委と事業体が協議し費用負担を決める」とあるからだ。もっともな指摘だが、市は無視し、事業体との契約解除へひた走った。

 肝心な情報を委員に伏せ、都合の悪い意見は切り捨てる。これで実行委が機能するはずがない。市長は「実行委は形骸化している」と断じたが、それを招いたのはほかならぬ市長であり、市であろう。

 市の強引な実行委の運営は、これにとどまらない。2月に徳島青年会議所(JC)選出の副委員長を辞任に追い込んだやり方は、常軌を逸している。

 市が辞任の理由に挙げたのは、副委員長がJCの理事を外れたこと。副委員長はJCを卒業したものの特別会員で残っており、JCも3月末まで委員を務めてもらうことにしていた。

 実行委の会則では、委員の要件を「経済団体等から選出された者」としており、団体の役員である必要はない。市が示した理由は明らかにおかしい。

 JCには市から「あの人だけは駄目だ。それ以外の人なら席はある」と連絡があったという。あからさまな副委員長排除である。

 伏線はあった。昨年11月に藍場浜公園で行った阿波踊りイベントを巡り、副委員長は計画段階から、市に提言や注文をしていた。翌年夏の阿波踊りに向け、コロナ対策を検証するイベントだから、事業体が主体となるべきだとも訴えていた。こうした言動が煙たがられたのではないか、と元副委員長はみる。

 このイベント後、副委員長にテレビ局からインタビューの依頼があり、市長と事務局に伝えた上で応じた。放送されると、事務局長の市経済部長から「市議が怒っている。市議会に出て(釈明して)もらう」と告げられた。そこには市議の関与が色濃くにじむ。

 実行委の会合が当日に突然延期されたこともあった。12月25日の会合前、テレビニュースで、11月の踊りイベントの観客アンケートの結果が流れたためだ。

 その日、実行委員長名で各委員にこんな文書が届いた。「一部の委員の方が実行委のコンセンサスを得ないままテレビ出演し、阿波おどり運営について意見を述べたり、会議資料の内容が事前に報道され・・・今後、取材対応に関しては事務局を窓口として一体化させていただきます」。事実上の「かん口令」だ。

 異論を封じ、意に沿わない人物を排除する強権政治そのものではないか。内藤氏が「みんなでいっしょに前へ」と呼び掛けた、あの市長選から1年。早すぎる変節である。