徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 病原性大腸菌はその病原性の違いによって5つに分類されています。その中で最も問題になるのが腸管出血性大腸菌です。

 腸管出血性大腸菌の持つ毒素は志賀毒素またはベロ毒素と呼ばれ、赤痢菌の持つ毒素と同じものです。この毒素に侵された細胞は蛋白合成が阻害されて、細胞死に至ります。

 志賀毒素が侵入しやすい組織は大腸上皮細胞、腎血管内皮細胞、尿細管細胞、脳血管内皮細胞などです。つまり毒素が大腸に侵入すると下痢を中心とする消化器症状が現れ、腎臓や脳に侵入すれば腎障害や脳神経症状が発生する可能性があります。

 腸管出血大腸菌感染症による最初の主な症状は腹痛と下痢です。経口感染の後3~5日の潜伏期間を経て頻回の水様下痢と腹痛で発病します。続いて血便を伴い、時に便成分が少なく鮮血便になります。このような腸炎の症状は1~2週間で軽快しますから、治療は水分や電解質の喪失に対する輸液などの対症療法と全身状態の管理が中心となります。

 ただし一部の症例では尿毒症症候群を合併することがありますから乏尿、浮腫、出血斑、タンパク尿や血尿、血小板減少、溶血性貧血が見られた場合には尿毒症症候群の発病を考えて対応する必要があります。

 腸管出血性大腸菌感染症に尿毒症症候群や脳症を合併すると死亡することがあります。治癒後に後遺症を残すこともあります。

 病原性大腸菌による食中毒の予防には食品に「細菌をつけない」、「増やさない」、「細菌を殺す」の食中毒予防3原則が大切です。