徳島市の阿波おどり実行委員会(3月末に解散)が運営を委託していた民間3社共同事業体との契約を解除した問題は、事業体が実行委事務局の市に損害賠償を求める事態に発展した。

 事業体は、新型コロナウイルス感染拡大で中止となった昨夏の阿波踊りの準備費用分担などを巡り、実行委との協議ができないまま、固定納付金を納めていないなどの理由で突然、契約解除を通告された。信義にもとるやり方で、納得できないのは当然だ。

 実行委員長を務めた内藤佐和子市長はきのうの定例会見で「契約通り粛々と対応した」と述べ、市に非はないとの考えを示した。果たしてそうだろうか。

 12日に会見した事業体総責任者の前田三郎キョードー東京取締役が賠償請求の根拠の一つにしたのは、昨年4月に、基本契約とは別に実行委と締結した年度契約である。そこでは、新型コロナウイルス感染拡大を「不可抗力」と認め、納付金の変更、費用分担について協議するとしている。

 同27日の実行委会合で、契約内容を記した資料が示され、市長も了解したはずだ。だからこそ「実行委として負担すべき部分はある」と述べたに違いない。

 首をかしげるのはその後、何の説明もなく考えを一転させたことだ。事業体が再三、実行委との協議を求めたにもかかわらず、市は避け続けた。契約に反しているのは市の方だろう。

 市長は「協議は事業体と事務局の(市との)間で丁寧に行われていた」と言うが、事業体は市との交渉ではらちがあかないため実行委との協議を求めた。事業体に理解を示す委員が多数となる可能性があり、市は協議を拒んだのではないか。

 しかも市の対応は「丁寧」どころか、むしろずさんだった。前田氏は会見でこんな事例を挙げている。

 事業体が納付金の免除に関する文書を、先月3日に実行委へ送付したところ、回答期限の12日に、市から19日まで待ってほしいとメールで連絡があった。だが19日を過ぎても返事がなく、問い合わせても何かしらの理由をつけ、結局、回答はなかったという。

 気になるのは、市政に影響力のある市議の影が見え隠れすることだ。前田氏によると、事業体が1月に市と話し合った際、事務局長の市経済部長から、市議と会うよう求められた。

 実行委員がテレビで昨年11月の踊りイベントについて語ったところ、この部長から「市議が怒っている」と言われたとの証言もある。

 不可解なことが多いのに、市長は詭弁(きべん)を弄(ろう)するばかりだ。行政の信頼を失わせた責任の重さを自覚すべきである。