ピンクの髪が目を引く。徳島文理高校(徳島市)を今春卒業した松本杏奈さん(18)=同市=は、米国のスタンフォード大など海外の名門大6校に合格した。16日に徳島市のアスティとくしまで聖火リレーのサポートランナーを務めた後、秋の大学入学まで都内に居を構えて進学に備える。いい思い出ばかりではない徳島。それでも将来は帰県し、若者が自分の力を発揮しやすいまちづくりに貢献するつもりだ。

高校卒業後、髪をピンクに染めた松本さん(松本さん提供)

 髪は、高校の卒業式後の3月に染めた。「好きな色を身にまとうと、自分に自信が持てるから」と笑顔を見せる。

 中学の時にぼんやりと米国に憧れたことはあったが、明確に海外への進学を志したのは高校2年のとき。中国であった、アジアの高校生らによる科学の合宿「アジアサイエンスキャンプ2019」に参加し、世界トップレベルの研究者の講義を受け、アジアの学生との交流で刺激を受けた。

 「これまで雲の上の存在と思っていた科学者も、普通の人間なんだ」。文化大革命期、中学高校に通えずに苦学した中国出身の研究者と知り合い、学ぶ意欲が高まった。

 キャンプ後、国立情報学研究所(東京)のプログラムで、触覚を用いて目や耳が不自由な人にも情報を伝えられるハードウエア機器について研究したり、海洋プラスチック問題の解決策を全国の高校生が探る企画「海洋プラ問題を解決するのは君だ!」を運営したりした。

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海洋プラスチック問題の解決策を全国の高校生が探る企画を運営。参加者は国際会議でプレゼンテーションをした。上位アイデアに選ばれた参加者に、ペットボトルを再利用したトロフィーを手渡す松本さん(左)=パシフィコ横浜、2021年2月

 高校1年の時に両親は離婚し、母親の元で暮らしていた。研究者を目指すことに母親が反対し、高3に上がる直前に制服やパソコンを抱えて家出。父親の家に駆け込んだ。

 英語の勉強は「独り言」中心。思ったことを英語でつぶやくのを繰り返すうち、読み書きが自然に上達した。

 海外の大学進学を支援する団体「atelier basi」の助けを借り、自身の課外活動などをオンライン面接やエッセーで自己アピール。スタンフォード大やカリフォルニア大バークレー校(UCバークレー)、同大サンタバーバラ校など6校に合格した。現在奨学金の審査を受けている最中だが、スタンフォード大への進学を強く希望している。進学後は、触覚を活用する研究に携わりたいと思っている。

 身近に海外進学を目指す同世代の女性はおらず、孤独や不安を感じることも多かった。「徳島で苦しんだからこそ、徳島を変えたい気持ちは強い。地方の女子の道を切り開き、次世代にバトンを渡したい」。ピンクの髪を揺らし、夢を追う。