「幻の巨大魚」として知られ、環境省レッドリストの絶滅危惧種IB類に指定されている海水魚「アカメ」が、小松島市和田島町の小松島湾で釣り上げられた。和田島漁協によると、小松島湾でアカメが確認されたのは初めて。
県内では海部郡沿岸で定置網に掛かることがあり、専門家は「小松島湾での確認は県内の分布を知る上で貴重な事例。生態の解明にもつながる」と話している。
釣り上げたのは、徳島市の会社員田中健太さん(30)。16日午前1時ごろ、スズキを狙って和田島漁港近くの岸壁でルアー釣りをしていると、体長78センチ、重さ4・5キロのアカメが針に掛かった。田中さんは「水族館でしか見たことがなく、身近な海で釣れると思わなかった」と驚く。
和田島漁協によると、過去に漁港近辺で水揚げされた例はなく、存在すら確認されていないという。
県立博物館と県水産研究課によると、アカメは温暖な環境を好み、紀伊水道側よりも水温の高い太平洋側で見つかることが多かった。近年は2013年に吉野川(徳島市)や那賀川(阿南市)、06年に鮎喰川(徳島市)のいずれも河口付近、05年に橘湾沖(阿南市)で確認されている。
夏季の水温上昇でアカメの好む水域が広がり、餌のイワシなどを追って紀伊水道側に北上している可能性があるという。
県立博物館の佐藤陽一自然課長は「主に県南で確認されていたアカメが分布域を広げているのではないか。確認事例が増えており、県内沿岸に生息している可能性もある」と話している。
«アカメ»スズキ目アカメ科で日本の固有種。成魚は体長が約1メートルになる。生態は解明されておらず、主に宮崎、高知両県の沿岸などで生息。徳島県内では、美波町の日和佐川や海陽町の浅川湾など県南地域でまれに捕獲されてきた。