飯泉知事(右)と一緒にしめ飾りを取り付ける内藤市長。この1年、公の場で2人が顔をそろえる場面は多かった=昨年12月28日、徳島中央公園

 昨年12月28日、徳島市の徳島中央公園鷲の門に、一緒にしめ飾りを取り付ける内藤佐和子市長と飯泉嘉門知事の姿があった。市長によるしめ飾りの設置は年末の恒例行事で、知事が参加したのは初めて。内藤市長が直接打診し、知事も二つ返事で受けたという。

 作業を終えた市長は、知事が数日前の記者会見で2020年を象徴する漢字として「未」を挙げたのに触れ、自身は「知」と表現。「知事の(漢字)と合わせ、『未知』への挑戦を一緒にやりたい」と語った。

 「未知への挑戦」は、飯泉県政5期目の県政運営指針のキャッチフレーズだ。

 昨年4月20日、本格的に公務を始動させた市長が真っ先に向かったのは県庁だった。知事は握手代わりのグータッチで歓迎。市長は選挙公約に掲げた「県市協調」で新ホール事業や新型コロナウイルス対策に取り組むことを要望し、知事も前向きな姿勢を見せた。

 それ以来、市長と知事のツーショットが目立つようになった。新型コロナ患者の治療に当たる医療従事者に誹謗(ひぼう)中傷をしないよう呼び掛ける共同会見を開いたり、合同で飲食店の現状を視察したり。知事が市の行事に出席する機会も増えた。大半は市長が要請している。

 市長と知事が知り合ったのは09年。当時大学生だった市長が、徳島の活性化につなげようと企画したビジネスコンテストに知事が審査員で参加した。その後、県の審議会で市長が委員に名を連ねるようになり、県職員の間で存在感が高まったという。

 県の元幹部は「内藤さんのアイデアを具体化するよう、知事が担当部局に指示することもあった。知事のお気に入りだったのは間違いない」と振り返る。別の元幹部は現在の関係について「市長が知事にうまく取り入っている印象。面白い企画や発想が好きな知事の共感を得ているのではないか」と見る。

 ただ、協調路線に対しては、市議会や市職員から批判もある。一例が、市文化センター跡地などで進める新ホール整備だ。

 県議会2月定例会本会議で知事は、ホール整備に伴いJR牟岐線に設置する新駅を、線路西側の市役所来庁者用駐車場に設ける方針を表明した。本会議に先立つ委員会では、県の担当者が市中央公民館と市社会福祉センターの敷地までホールの建設用地を広げると明らかにした。

 県の整備により、市の負担額は市単独で計画していた時より約70億円減る。しかし、駐車場や公民館の撤去は市民サービスの低下を招く。市議会に報告する前に県が市有施設の使い方を公表したこともあり、市議会3月定例会では市長野党の議員から「知事の言うままに市の施設を差し出すのか」との批判が出た。

 市役所内では知事への不信感が根強い。知事は原秀樹市長時代に新町西地区再開発事業の都市計画決定に同意せず、遠藤彰良前市長に対しては新ホールを巡る土地交換協議を突然中断した。ある市幹部は「機嫌を損ねたら、いつ手のひらを返されるか分からない相手だ」と言う。

 一方、知事の支持者の間にも市長との蜜月ぶりを懸念する声が上がる。アミコビルを運営する徳島都市開発への20億円融資や阿波踊りの運営を巡る混乱、市長リコール(解職請求)の動きなどを不安材料と見ているためだ。

 一部県議から次期衆院選・徳島1区から知事の出馬を望む声が上がっており、知事の後援会関係者は「各界の幅広い支持を得てきた。仮にそうなれば『市長とべったり』の印象は良くない」と打ち明けた。今後の県内政局が県市の協調関係に影響を及ぼす可能性もある。