徳島市消防局の指令センター。コロナ患者の急増に伴い、救急搬送が困難になる事案が増えている

 徳島県内で新型コロナウイルスの感染者が急増しているのに伴い、救急や一般の医療に大きな影響が出ている。徳島市消防局で4月中旬以降、搬送先がなかなか決まらない「搬送困難事案」が20件あり、前年同期の5倍に上った。県立中央病院(徳島市)の救急受け入れ停止によるしわ寄せも見られ、医療関係者は「救える命が救えない事態も起こりうる」と危機感を強めている。

 徳島市の高齢者施設で4月中旬、女性入所者の脈拍が上がった。施設の看護師がかかりつけ医に連絡すると、「救急患者で手いっぱい」と断られた。他の複数の病院も同じだった。

 119番しても、なかなか搬送先が見つからなかった。施設から距離のある徳島赤十字病院(小松島市)に決まったものの、「すぐには対応できない」との条件付きだった。その間に脈は速くなり、意識レベルが低下。搬送中や診察待ちの間に急変する恐れがあり、救急隊からは「家族の了承を得てください」と念を押されたという。

 看護師は「普段は体調が変化しても30分~1時間もあれば、どこかで診てもらえるのに、今回は3~4時間かかった。コロナ以外の患者に大きな影響が出ている」と不安を募らせる。

 「搬送困難事案」は、救急隊による医療機関への受け入れ照会が4回以上、かつ現場滞在が30分以上になったケース。徳島市消防局によると、4月12~18日は12件(前年同期2件)、19~25日は8件(2件)に上った。今年に入り、2桁だったのは1月18~24日の14件以来だった。

 最も時間を要したのは自宅で転んで腰を負傷した70代女性の場合。5回目の交渉で搬送先が決まり、現場滞在は61分に上った。

 県内救急医療の中核である県立中央病院は、コロナ患者の治療に重点を置くため、小児科を除く救急を17日から停止している。

 県内にある病院の医療関係者は「ここ1週間、明らかに救急患者の受け入れが増えている」と明かす。ある日は救急患者の手術中に、緊急手術が必要な患者の受け入れ要請があった。最初は断ったものの救急隊から再要請があり、最終的に応じた。手術を同時進行し、「ぎりぎりの状態だった」と振り返る。

 コロナ感染の危険性もはらむ。緊急性の高い患者は、ウイルスの検査結果を待たずに処置を始めるため、「救急患者が増えると感染リスクも上がる。もし処置後に陽性と分かれば救急を停止せざるを得ない」と綱渡りの実態を語った。