新しい葉の樹冠を広げるコハウチワカエデの大木を下から見上げた。鮮やかな緑が青空に映える=那賀町の高城山

 雲一つない青空が広がる中、新緑に包まれた山の光景を求めて、那賀町と美馬市の境界にそびえる高城山(1627・9メートル)に出掛けた。

 

 高城山はかつて、那賀町と神山町の境に位置する土須峠にまず登り、ひたすら長い尾根道を歩き続けなければたどり着けなかった。少なくとも2日はかかった。

 一変させたのが、1985年の剣山スーパー林道(87・7キロ)の全通だ。山頂近くまで車で行けるようになり、林道からは最短の登山道を使えば歩いて約30分。徳島市からでも日帰りで登山を楽しめる山になっている。

 車を降りて登山道に入ると、原生林に包まれる。モミやブナ、カエデなど高山帯の巨木が枝を広げ、雄大さに圧倒される。地面に散らばる落ち葉の間からは、さまざまな植物が芽をのぞかせ、新たな命の息吹を感じさせてくれる。

 時折風が林の中を抜ける。新緑の若葉がざわざわと揺れ、木々の芳香が漂う。聞こえるのは小鳥のさえずりぐらいで、都市部の騒がしさからは想像もできない静かさだ。高城山周辺では巨大風力発電施設が計画されている。時間を忘れてしまうほどの別世界は、姿を変えてしまうのだろうか。