個性豊かな手作りの庭を楽しむ来場者=2019年5月、阿波市吉野町柿原

イベントは中止になったが、花への情熱は尽きないメンバー=阿波市阿波町西林

 木陰が心地よい緑の庭、香り豊かなハーブガーデン、華やかなバラのガーデン。徳島県阿波市では毎年5月になると、十数軒の個人宅の庭を一斉に公開する「阿波オープンガーデン」(実行委主催)が開かれる。本来なら今年で9回目を迎えるはずが、7回で止まったまま。2年連続で中止になった。

 「人がひっきりなしに訪れて花談議で盛り上がった」。庭主は2年前のにぎわいを振り返る。草花だけでなく、小川や小屋、動物のオブジェなどで空間をデザイン。来園者を菓子やハーブティーでもてなす。

 きっかけは2012年。地域活性化の第一人者、井原まゆみさん(72)=阿波町四歩一=が「花を生かしてまちをすてきに変えられないか」と思い立った。市内には花好きが何人もいた。知人らに呼び掛け、同年10月に阿波オープンガーデンクラブ(現阿波ガーデンクラブ)を結成。翌13年5月に開いた第1回では、14軒が2日間開放し、約1500人が来場した。

 17年には16日間に延び、来場は計1万1千人に。バスツアーで県外から見物に来る人もいた。「個人の庭が力を合わせてまちのイメージをつくった」。名物イベントに育ち、19年からは同クラブや市観光協会などでつくる実行委が主催するようになった。

 昨年の中止を経て今年こそは開催するつもりだったが、県内の感染者急増を受けて取りやめざるを得なかった。メンバーからは「花が寂しがっている」と残念がる声も聞かれるが「感染が拡大している中、ほっとしている部分もある」との声が大勢を占めた。

 昨年は代わりにガーデニング講習会を開いたり、ネットで公開したりした。事務局を務める市観光協会は「今年も代替イベントを検討したい」としている。

 中止になってもメンバーの日常は変わらない。庭に出て手入れをする。大好きな空間で、大好きな花をめでる。クラブ代表の吉田年子さん(72)=阿波町西林=は「庭は年々バージョンアップする。来年を楽しみにしてほしい」。その目は既に「3年ぶりの開催」を見据えている。

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、徳島県内各地の恒例行事は中止や延期、内容変更を余儀なくされている。収束を望みつつ継承や再開に思いをはせる人たちを追った。