経済的困窮や予期せぬ妊娠などで育児に困難を抱える可能性があり、出産前から見守る必要があると行政に認定された「特定妊婦」が、徳島県内で記録が残る2016~19年度の4年間で計98人いたことが分かった。全国では18年度に7千人を超えるなど、近年、右肩上がりで増えている。困難を抱える妊婦が適切な支援を受けられないと児童虐待につながるリスクもあり、県は産婦人科医らと連携して早期の支援開始に努めている。

 特定妊婦は虐待防止の観点から09年施行の改正児童福祉法で明記された。主に市町村が設置し、児童相談所も参加する「要保護児童対策地域協議会」(要対協)が協議した上で登録。保健師らが家庭訪問などを行う。県内では、24市町村全てが要対協を設置。行政と医療機関、民間支援団体などが妊婦の情報を共有し、支援している。

 県内では16年度17人、17年度26人、18年度31人、19年度24人(いずれも4月1日時点)が登録された。県健康づくり課によると<1>若年で経済的基盤が弱い<2>パートナーがおらず、家族のサポートも得られない<3>精神疾患を含む基礎疾患がある―などの妊婦が対象となっている。

 支援が必要な妊婦を早期に見つけ出すため、県と産婦人科医、小児科医、保健師らでつくる県周産期医療協議会は18年度、「妊娠初期アンケート」を作成。産婦人科へ診察に来た人や自治体の窓口に母子手帳を受け取りに来た人に▽予定した妊娠だったか▽産後、育児に協力してくれる人はいるか▽気分がふさいだり不安になったりすることはあるか―などを尋ねている。

 「予期せぬ妊娠で戸惑っている」「悩みを打ち明ける相手がいない」といった回答から、リスクが高いと医師が判断した場合、本人に了解を得た上で自治体に連絡している。特定妊婦だけでなく、支援が必要な妊婦の早期ケアにもつながっている。県健康づくり課は「不安なことがあれば、市町村の母子相談窓口などに連絡してほしい」と呼び掛けている。

制度開始10年で7倍 全国

 厚生労働省によると、特定妊婦は制度が始まった2009年から10年目の18年には約7倍の7233人に増えた。専門家は「行政の支援につながらない妊婦は多数おり、氷山の一角だ」と指摘する。

 厚労省の調査では、09年6月時点で全国の1663市区町村が要保護児童対策地域協議会(要対協)を設置し、登録された特定妊婦は994人だった。その後は横ばい状態が続いたが、16年4月時点は4785人、17年4月は5976人と登録数が近年増加。18年4月はほぼ100%に当たる1736市区町村で要対協が整備され、7233人に上った。19年は調査中。

 近年増加した理由について、厚労省の担当者は「特定妊婦への認識が広まったことが要因としてあり得る」とする。

 虐待事例を分析する厚労省の専門委員会による直近の報告では、死亡例の4割は0歳児。出産後24時間未満や1カ月未満の子どもも一定割合を占めており、特定妊婦の支援が急務だ。

 母子保健推進会議の佐藤拓代医師は「要対協が特定妊婦として認定したのは、貧困や精神障害など社会的な困難を抱える妊婦のごく一部。支援がしっかり行われないと乳幼児の虐待死などにつながりかねない」とし、早期の実態把握を求めている。