「海の勇者」クヌッセン機関長の遺徳をたたえる顕彰碑=海陽町浅川

 徳島県の最も南部、黒潮洗う太平洋に面する海陽町に、デンマークの貨物船の機関長ヨハネス・クヌッセンの顕彰碑がある。危険を顧みぬ勇気ある行動で命を落とした“海の英雄”をたたえ、地元住民や児童らが清掃活動を続けている。

 悲劇のあらましは、こうだ。1957年2月、冬の嵐が吹き荒れる紀伊水道沖で、海南町(現・海陽町)の木材運搬船・高砂丸が沈没。近くを航行中のデンマーク船が、助けを求める高砂丸の船員3人を発見し、クヌッセン機関長が海に飛び込んだ。だが荒波にのまれ、全員が犠牲になった。クヌッセンの遺体は翌日、和歌山で見つかっている。

 海南町は59年、その尊い行為に感謝し、語り継ごうと顕彰碑を建立した。高さ2・3メートル、クヌッセンの胸像が刻まれる。傍らには、海難事故時の行動や人柄を記した説明板もある。地元では「クヌッセンさん」と呼ばれ、敬愛されてきた。

 2009年、長年の清掃活動に対する駐日デンマーク大使の礼状が、浅川小学校に届く。「徳島の人々が国を超えて互いに助け合うことの大切さを尊重していることを聞き、大変心打たれた」などと記されていた。勇気ある異国の船員さんがいたことを、私たちも忘れないでいよう。

〈2021・5・11〉