徳島大大学院医歯薬学研究部の二川健教授(生体栄養学)らの研究グループが、新型コロナウイルスに感染する際に働くとされる酵素「MSPL」の結晶構造を世界で初めて明らかにした。構造が分かったことで感染を防ぐ「阻害剤」の開発が可能になり、グループは有効な治療薬の研究が加速すると期待している。研究成果は4月上旬にドイツのオンライン科学誌に掲載された。

 新型コロナウイルスは体内に入ると、スパイクタンパク質と呼ばれる部位が気道表面にあるMSPLなどのタンパク質分解酵素に傷つけられて活性化し、細胞と融合して感染する。感染の予防や治療には、酵素の働きを妨げる「阻害剤」の開発が重要になる。

 グループはこれまでに、高病原性鳥インフルエンザウイルスが人で流行した場合を想定して研究。気道表面のMSPLがウイルスを活性化させると突き止めたが、構造は分かっていなかった。

 今回の研究では、インフルエンザウイルスなどの感染を抑制するため開発された阻害剤を使い、MSPLと結びついて結晶化させた状態でエックス線を当ててコンピューター解析した。MSPLは細胞の外にウイルスを傷つける組織が飛び出しており、解析で構造が判明。この組織は電気を帯びる性質を持ち、電荷の働きでウイルスを傷つける場所を認識している特徴も明らかになった。

 今年に入ってMSPLが新型コロナウイルスを活性化させるとする複数の論文が発表され、阻害剤の開発に必要な構造の解明が急がれていた。

 新たな阻害剤はMSPLの形状や電荷特性に合わせて開発することで、より効果が高まるとみている。二川教授は「成果を基に有効な阻害剤を見いだせれば、今は存在しない新型コロナの治療薬につながる。今後も研究を続け、創薬の実現を目指したい」と話した。