都合の悪いものを、闇に葬ろうとしていたのではないか。そんな疑念が湧くのは、前政権から文書の廃棄や虚偽答弁が繰り返されてきたためだ。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんが決裁文書改ざんの過程をまとめた「赤木ファイル」の存在を、国が初めて認めた。

 妻雅子さんが大阪地裁での損害賠償訴訟で、国に提出を求めてから1年余り。ファイルがあると語った元上司の音声データが出てからでも半年がたつ。

 国は長い間「探索中」などとし、ようやく「発見」したのは地裁に促されたからだ。あまりに不誠実な対応である。

 国は来月23日に開かれる口頭弁論でファイルを提出するとしたが、一部を黒塗りにするという。重要な部分をまた隠蔽(いんぺい)するのではないかとの疑いを招かないためにも、全てを開示しなければならない。

 森友問題は、国が国有地を約8億円値引きして学園に売却する契約を結んだというものだ。安倍晋三首相(当時)の妻昭恵氏と学園は親しい関係だった。

 発覚後の2017年2月、安倍氏は自身や妻の関与があれば「総理も国会議員も辞める」と国会で断言した。この答弁が改ざんのきっかけとなったのは間違いない。その結果、国と学園との交渉記録から昭恵氏の名前や「特例的な内容」といった文言が削られた。

 財務省が18年6月に公表した調査報告書は、佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)が主導して改ざんの方向性を決めたとしている。首相への忖度(そんたく)が読み取れる内容だったが、佐川氏から直接的な指示はなかったとするなど、身内による調査の限界も示した。

 現場で改ざんを強いられ、それを苦に自ら命を絶ったのが赤木さんである。音声データの中で、元上司はファイルについて「見ただけで、われわれがどういう過程でやったか全部分かる」などと話している。

 改ざんは本当に官僚の忖度だけで行われたのか。官邸や政治家らの関与はなかったのか。

 疑問は改ざんの理由や経緯にとどまらない。そもそも国有地を大幅に値引きした動機は何だったのか。いまだに不可解な点は多い。

 佐川氏ら官僚20人の処分で幕引きを図った財務省の調査は、全容解明には程遠いものだった。

 赤木ファイルは、数々の謎に答える手掛かりとなる可能性がある。

 森友問題の真相を明らかにしなければならない。政府はファイルの開示を機に、第三者委員会を設けて改めて調査し直すべきだ。