イスラエルとパレスチナの和平交渉が停滞する中、再び本格的な戦闘に発展する恐れが高まっている。

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが、10日夜から11日にかけてイスラエルの主要都市に向けロケット弾を多数発射。イスラエル軍は報復としてガザを空爆した。

 応酬は続いており、現地の報道によると、これまでに子どもや女性を含めて双方で80人近くが死亡、多くの負傷者が出ている。

 大規模な戦闘が繰り広げられた2014年以降で最悪の事態である。これ以上、対立を激化させてはならない。国際社会は双方に強く自制を促すとともに、積極的に事態収拾に乗り出すべきだ。

 発火点となったのは、イスラム教やユダヤ教などの聖地エルサレムの旧市街。イスラム教のラマダン(断食月)が始まった4月以降、パレスチナ人とイスラエル当局との間で連日、小競り合いが起こっていた。

 今月10日には主要聖地である「神殿の丘」など複数の場所で争いが激化。パレスチナ人330人以上が負傷したこともあり、一気に緊迫した。

 原因は多岐にわたる。一つは、裁判で東エルサレムの居住区からパレスチナ人が立ち退きを求められたことだ。ハマスはロケット弾を撃ち込んだことを「不当な扱いへの報復だ」と、正当化した。

 これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザからの攻撃について「一線を越えた。重い代償を払うことになる」と、さらなる空爆の実施を明言する。

 双方とも沈静化に動く気配はなく、「アラブ対ユダヤ」の対立が拡大しかねない状況だ。

 和平交渉は、08年にイスラエル軍がガザを攻撃して以降、中断している。

 加えて、トランプ前米政権は過剰なまでに親イスラエルの立場を取り、アラブ諸国もトランプ氏の仲介で、パレスチナ問題を置き去りにしたままイスラエルとの国交正常化を進めた。

 国際社会から取り残されたパレスチナが孤立感を深め、イスラエルへの反発を強めたのは当然だろう。

 情勢は急速に悪化しており、直ちに沈静化させなければならない。その鍵を握っているのは中東地域に大きな影響力を持つ米国だ。

 バイデン政権は歴代政権と比べてパレスチナ問題に消極的とされる。だが、与党・民主党内からは、事態収拾へ積極的な役割を果たすよう求める声が高まっている。それは、国際社会の要望でもある。

 バイデン政権には、中東和平の解決に向け前政権と一線を画した新たな対応策を期待したい。