衆院議員の任期満了となる10月21日まで、5カ月余りとなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響などで「9月解散」が有力となりつつも、政界は予断を許さない。徳島県内でも次期衆院選の動きが活発化し始めた。

 9日に開かれた自民党県連常任総務会は、大荒れとなった。県議会の最大会派・県議会自民党(24人)が徳島1区現職の後藤田正純衆院議員の言動を問題視し、次期衆院選で公認候補としないよう党本部への申し入れを県連に求めていた。協議は非公開で行われ、県議と後藤田氏の応酬は扉の外まで聞こえるほど過熱した。

 申し入れは賛成多数で決まり、出席した県議の1人はこう漏らした。「もう後には引けない」

 2019年の知事選で支援候補が分かれた後藤田氏と自民県議の溝は広がり続け、党所属県議全員が現職を公認しないよう求める「前代未聞」(山口俊一県連会長)の事態となっている。

 次期衆院選で県議側が、擁立するのではないかと取りざたされているのが飯泉嘉門知事だ。

 4月に開かれた会合で、県連幹事長で県議会自民党会長を務める嘉見博之県議が飯泉知事に徳島1区からの出馬を促す発言をして表面化。以降、自民県議と後藤田氏の対立は激しさを増していく。

 山口会長は「県連としてはそのような話にはなっていない」と繰り返し、県議会自民党でも具体的な動きはない。飯泉知事自身は7日の定例会見で「新型コロナウイルス対応に全力投球しなければならない。今の段階では考える余地はない」と述べるにとどめた。

 ただ、嘉見氏は9日の総務会後の会見で改めて知事の出馬への期待を問われ「その思いは持っている」と語った。飯泉知事も「今の段階では」と前置きしており、含みを残している。

 今後の焦点となるのが党本部の対応や知事の動向だが、県議側の思惑通りに進むかは見通せない。

 県連は近く、常任総務会での決定を受けて後藤田氏を公認しないよう党本部に申し入れる。自民党は、県内の選挙区が3から2に削減された14年の衆院選時に後藤田氏を1区予定者とする確認書を結んでおり、公認に際しては「現職優先」の方針がある。県連関係者は「現職の公認を変えるのはよっぽどの場合だろう」とみている。

 新型コロナウイルスの感染状況が、知事の出馬に影響を及ぼしかねないとの見方もある。県内では4月に感染が急拡大し、依然として収束の兆しは見られない。県内の首長からは「コロナ対応を放り出して国政に出るべきでない」と否定的な声が上がる。

 自民党内では、福山守衆院議員(比例四国)も徳島1区での出馬を模索している。ゴールデンウイーク後に「選挙区か比例で出るかを判断したい」としていたものの、感染急拡大の影響で地元後援者と十分協議できておらず結論を持ち越している。福山氏は「5月中には決めたい」と話す。

 「自民党本部がどう判断するか、正式に決まるまでは何も言えない」。連立政権を組み、これまで選挙協力してきた公明党県本部の関係者は「今は白紙の状態」と情勢を見守る。

 徳島2区では、山口氏が11期目の当選を目指す。共産党に加えて立憲民主党から公認候補が立つため、危機感を募らせている。

 感染拡大が止まらないコロナ対応や「政治とカネ」の問題などで、政府・与党への風当たりは厳しい。後藤田氏と県議側との対立を冷ややかに見る党員も少なくない。ある党員は「一枚岩で衆院選に臨むのは無理だろう。野党を利することにならなければいいが」とこぼした。