「桃源郷」の言葉に象徴されるように中国では古来、桃を神聖な果実として扱ってきた。邪気を払う力を持つとあがめ、祭祀や慶祝事に用いたとされる。弥生時代前後に伝わった日本でも同等の存在だったとか
いにしえの桃の種で日本の歴史が動いたと、歴史・考古学の専門家が興奮気味だ。奈良県の纒向遺跡で見つかった種が、女王・卑弥呼が君臨した年代と合致したという研究結果である。邪馬台国はどこにあったのか。日本史最大の謎は一気に、纒向を中心とする畿内説へ…
おや、待てよ。邪馬台国といえば徳島にあったという説があるではないか。桃の種の分析を受け、白旗を上げたのか
「阿波説はいささかも揺るぎません」。阿波説を唱える徳島市のNPO法人・阿波国古代研究所の笹田孝至理事長に、当惑の色はなかった。むしろ「測定年代に幅がありすぎる」などと果敢に異議を投げ掛ける
邪馬台国は畿内説と九州説が学会の主流。阿波説は裏付けとなる証拠がないとして、はなから異端児扱いが続く。それでも、笹田さんらは強気の持論を貫いてきた
根拠もなく主張しているのではない。説の詳細を知るなら、県立総合大学校で研究所が担当している入門講座で。あの説、この説、侃々諤々と意見を戦わせたらいい。懐深く、寛容に。なにせ壮大な太古のロマンである。