この国の行く末は大丈夫か。そんな危機感さえ抱かせる事態である。

 キャリアと呼ばれる中央省庁幹部候補の「総合職」採用試験申込者が減少している。本年度は前年度比14・5%減の1万4310人にとどまった。5年連続のマイナスで、減少率も過去最大となった。

 人事院は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人が密集する東京での勤務が敬遠され、地方出身の学生が地元の自治体や企業に流れているとみる。だが、それは理由の一端で、先輩の姿を見て敬遠する学生が多いのではないか。

 若手キャリアの離職も増えている。内閣人事局のまとめでは、2019年度に20代の87人が退職した。6年前の4倍を超す多さだ。30歳未満の国家公務員のうち男性の約15%、女性の約10%が数年以内に辞めたいと答えているから驚く。

 要因の一つが、霞が関で常態化している深夜残業や長時間勤務だ。昨年10、11月の調査で、20代キャリアの約30%が過労死ラインの目安とされる月80時間を超えて時間外に在庁。コロナ対策に当たる内閣官房の担当部署では今年1月の平均が124時間に上った。

 国会議員の質問への対応や企画立案、予算編成作業に当たるためだという。法案の字句などのミスが相次いだのも、過労が関係していないか。働き方改革を進めなければ、離職が加速しかねない。国会議員が配慮すべき点もあろう。

 国のために尽くそうと志を抱いて入った若手がやる気をなくす最大の要因は、安倍晋三前政権から菅義偉政権へと続くゆがんだ政治主導と考えられる。早急に正さねばならない。

 内閣人事局が14年に設置され、首相官邸が省庁の幹部人事を握った。官僚は左遷を恐れ、萎縮して思ったことを言えなくなり、国政の欠陥も指摘しづらくなった。国民ではなく官邸の方を向いて仕事をするようになったと言える。

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん、菅首相の長男が勤める利害関係企業幹部らとの会食など、政権への忖度(そんたく)が否定できない不祥事も起きている。

 「全体の奉仕者」の本分を見失った上司を見れば、若手が官僚の誇りややりがいを失っても不思議ではない。現に退職理由に「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」と答えた人が多かった。政府は重く受け止めるべきだ。

 優秀な人材が集まらなければ官僚組織は衰え、政治家の質の劣化と相まって国力の低下につながる。首相や大臣とも忌憚(きたん)なく議論でき、能力を生かせる職場を取り戻す必要がある。