初夏の味覚「初ガツオ」が旬を迎える中、徳島県内の量販店の鮮魚売り場では今シーズン、異変が起きている。寄生虫「アニサキス」による食中毒被害を懸念して生カツオの販売を控える店と、安全確認を徹底するなどして提供を続ける店に対応が二分。消費者も加熱、冷凍などの予防方法を理解する必要がありそうだ
県内では5月、鳴門市の量販店で購入したカツオの刺し身を食べた男性が、アニサキスによる食中毒を発症。県安全衛生課は魚介類を扱う事業者に注意を呼び掛け、ホームページに警告文を載せた。
生カツオの取り扱いを見合わせたのは、県内で32店舗を展開するキョーエイ(徳島市)、フジグラン北島などを運営するフジ(本部・松山市)。刺し身など生カツオを使った商品の販売を停止し、代わりに火を通した「たたき」や冷凍物を増やした。キョーエイの担当者は「(生カツオを扱って)万が一、お客さんに迷惑を掛けてはいけない」と説明する。
厚生労働省の食中毒統計によると、アニサキスによる食中毒の発生は2015年の127件、16年の124件から、17年は230件に急増した。原因は不明だが、同省は「アニサキスに対する認知度が高まったためかもしれない」とする。
一方、食中毒対策を徹底した上で販売を続ける店もある。県内26店舗を構えるマルナカ(本部・高松市)では、皮と身の間に潜むアニサキスを見つけやすいよう皮を取り除く処理を始めた。丸太の生カツオを求める客には、寄生虫の有無をよく確認するよう求めた上で販売している。
セブン(徳島市)は内臓に寄生する傾向があるアニサキスの特性を踏まえ、背節を刺し身に、腹節をたたきに使っている。イオンモール徳島(同)を運営するイオンリテール中四国カンパニー(広島市)は、複数のスタッフによる目視確認を徹底する。
県安全衛生課はアニサキスによる食中毒の予防法として▽60度で1分以上加熱▽マイナス20度以下で24時間以上冷凍▽新鮮なうちに内臓を取り除く―などを推奨。「自宅で調理する際は自分の目でアニサキスの有無をよくチェックして」としている。
◆アニサキス◆ カツオのほかサバ、サケ、イカなどの体内に寄生する線虫。その幼虫は体長2~3センチ、幅1ミリほどで、魚の鮮度が落ちると内臓から身の部分に移動するとされる。幼虫が寄生する魚介類を生で食べると、体内に侵入した幼虫が胃壁や腸壁を刺すなどして、激しい腹痛や嘔吐を伴う食中毒を引き起こす。