国内外からの批判に抗しきれなかったのだろう。

 政府・与党が入管難民法改正案の今国会成立を見送った。成立すれば難民条約違反にもなりかねなかった。断念は遅過ぎたくらいである。

 これで議論は一から出直しとなる。政府は厳しい指摘を真剣に受け止め、国際的な人権基準に沿った入管制度となるよう、抜本改正に取り組むべきだ。

 国会では一時、与野党の修正協議がまとまりかけていた。しかし、入管施設で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんのビデオ映像開示を法務省が拒み、野党が反発。協議が決裂し、与党は強行採決の構えも見せていた。

 一転して諦めたのは、新型コロナ対応で内閣支持率が低迷する中、強引な手法を取れば衆院選に悪影響があると判断したためだ。

 人権を無視したような外国人女性の扱いに対する国民の怒りも大きかった。

 ウィシュマさんは昨年8月に不法在留状態になっていることが分かり、収容された。今年に入って体調不良を訴えたものの十分な処置を受けられず、搬送先の病院で亡くなった。

 法務省はなぜ遺族にも映像を見せないのか。経緯の真相解明は急務だ。

 2019年にナイジェリア国籍の男性が餓死するなど、入管施設での死亡例は後を絶たない。

 だが、改正案はそうした悲劇を防ぐどころか、助長させかねない内容だった。

 その一つが、難民認定を3回以上申請した人は強制送還できるとしたことだ。送還逃れを防ぎ、長期収容を解消する狙いだというが、そもそも日本の難民認定率は1%前後と、他の先進国と比べて極端に低い。

 改正案に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民条約違反の恐れがあるとして「重大な懸念」を表明した。

 改正案は、収容の代わりに親族や支援者に監督させる「管理措置」の新設も掲げたが、条件は従来の「仮放免」より厳しい。判断は入管当局の裁量次第で、認められなければ無期限の収容が続く可能性があった。

 状況を改善するには、収容を原則とする考え方を変えることが不可欠だ。

 国連人権理事会の作業部会など国際機関は、裁判所による司法審査や収容期間の上限設定などを何度も政府に求めてきた。野党も、第三者機関による難民認定の導入や司法審査活用などの修正案を出している。どれも傾聴に値しよう。

 日本も批准している自由権規約は身体の自由が原則であり、収容は例外的だと定めている。その国際ルールに立ち返るところから始めなければならない。