日本列島の最南部に弓状に伸びる島々、いわゆる琉球弧(りゅうきゅうこ)に吉報が届いた。「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島(いりおもてじま)」が世界自然遺産に登録される見通しとなった。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が「生物多様性の保全上、重要な地域」として登録を勧告した。自然遺産は国内5件目となる。

 アマミノクロウサギ(奄美大島、徳之島)やヤンバルクイナ(沖縄本島北部)、イリオモテヤマネコ(西表島)が生息する「貴重な固有種の宝庫」が人類共通の宝だと認められたことを喜びたい。生態系保全を最優先させた上で、地域活性化との両立の道も探りたい。

 区域は鹿児島、沖縄両県の4島、約4万3千ヘクタールにおよぶ。黒潮と季節風の影響による高温、湿潤な自然環境が特徴だ。大陸から島々が分離する過程で、生物は独自の進化を遂げた。絶滅危惧種は95種、うち固有種は75種にも上る。

 政府は3年前に「飛び地状の推薦区域が多く、一体的に保全できない」などの理由で登録延期勧告を受けており、捲土(けんど)重来を期しての再挑戦だった。

 今回の申請では、2016年に米軍から返還された沖縄本島北部の訓練場跡地を組み入れるなどして、推薦区域を約4800ヘクタール拡大。24カ所に分断されていた飛び地を5カ所にまとめて一体性をアピールした。外来種対策も講じた。

 ただ訓練場跡地ではドラム缶などの廃棄物が多数見つかっている。「自然遺産にふさわしい場所と言えるのか」(地元関係者)との声も上がっているという。政府や米軍は廃棄物の撤去を早急に進めるべきだ。

 関係自治体では世界遺産のブランドを追い風に、観光振興への期待が高まる。その一方で、過度の観光客流入がもたらす環境破壊を懸念する声も根強い。

 諮問機関の勧告でも「増加が予想される観光客数の管理」「希少動物の交通事故防止対策」が課題に挙げられている。当然の指摘だろう。

 例えば、飛べない鳥ヤンバルクイナが生息する沖縄本島北部は、那覇市から車で2時間ほどの距離だ。観光客が素晴らしい大自然を身近に感じ、癒やしを求める気持ちも理解できる。

 だが、希少動物の生息ゾーンにむやみに足を踏み入れ、良好な環境を壊してしまっては元も子もない。「入域規制」などの自主ルール作りに関係者一同、知恵を出し合おう。

 地元自治体へのふるさと納税をはじめ、私たち一人一人にもできる支援がある。「固有種の宝庫」を次代に継承するため、共に考え、行動に移したい。