小松島市や鳴門市で相次いで見つかった幻の巨大魚「アカメ」。絶滅のおそれがある野生生物をまとめた環境省レッドリストにも記載されています。どんな魚か、徳島県立博物館の佐藤陽一自然課長に聞きました。
◆アカメってどんな魚ですか?
スズキの仲間で、大きさは1メートル以上、重さは30キロ以上になります。黒潮の影響が強い太平洋沿岸部の海~汽水域(淡水と海水が混ざるところ)で生息しています。静岡から鹿児島までで確認例がありますが、おもな分布域は宮崎県と高知県。徳島県内では海部郡沿岸で時々見つかっていました。近年は紀伊水道でも確認されることが増え、那賀川や吉野川などの河口付近で見つかっています。瀬戸内は本来生息地ではないので、播磨灘(鳴門市)で見つかったものは、紀伊水道から移動していったのではないでしょうか。
どこで産卵するのかが解明されていないのですが、生まれたての時は海で、稚魚・幼魚は河口で、成魚は海で過ごすことが分かっています。成魚もしばしば河口に姿を見せるので、河口付近とそれほど離れずに一生を送る魚のようです。
◆環境省レッドリストでは絶滅危惧種IB類に指定されています。(ニホンウナギなども同じ分類)
徳島県版レッドリストでは、準絶滅危惧種となっています。国より基準が緩くなっていますが、それは海部郡での確認情報しかなく、幼魚が見つかっていなかったため、高知の個体が移動してきている可能性があったからです。高知では稚魚から成魚までが確認されています。紀伊水道など徳島県内での発見が相次ぎ、幼魚が生息していることが確認されると、保護するために徳島県版の基準がより厳しいものへと変わるかもしれません。
◆アカメの数が増えているとは考えられないんでしょうか?
水温の上昇により、生息地の分布が拡大している可能性はあります。他の魚類でも同じ傾向にありますね。ただ、正直どれくらいの数がいるのかは不明です。
◆釣りなどで掛かることがあるようです。どう対応するのがいいですか?
食べないのであればリリースしたほうがいいでしょう。ルアーフィッシングではリリースすることも多いんじゃないでしょうか。定置網に掛かったものなどは弱っているかもしれないので、リリースするより食べたほうがいいかも。
一般的に、イワシのようにうろこがはがれやすい魚は弱いです。アカメはうろこがしっかりしていて比較的丈夫な魚なので、すぐに放せば大丈夫だと思います。できるだけ早く戻すこと、えらを傷つけないこと、擦れに弱いので表面をこすらないように気をつけましょう。
◆熱帯魚店で稚魚が売られていることもあるようです。
稚魚の生息地で捕獲して売っているということなので、よくないですね。稚魚や幼魚の生息場所を保全することと売り物にしないことが、アカメを保護することにつながります。
小松島湾(小松島市)や播磨灘(鳴門市)では初めてですが、徳島県南ではこれまでにも時々確認されています。日和佐町漁協の豊崎辰輝組合長に聞きました。
◆最近話題のアカメですが、日和佐町漁協では水揚げがありますか?
今年はまだ報告を聞いてないですが、ここ数年は定置網やさし網にかかったと年1、2回は聞きます。大きさは50~60センチというところでしょうか。20年ほど前にはほとんど掛からず、「珍しい魚」という印象でしたが、当時と比べると、近年はそこまで珍しいと感じない程度に確認されています。スズキを狙った釣り客がたまたまアカメを釣ることもあるんじゃないかなと思いますが、そういう場合は報告がないので分かりません。
◆網に掛かったアカメはどうしているんですか?
出荷できるほどたくさん捕れるわけではないので、漁師が知り合いに譲ったり食べたりと、個人的に処分しています。
◆おいしいんですか?
私は食べたことはないんですが、おいしいと聞いていますよ。