漫画家の藤子・F・不二雄さんが好んで使った表現に「『SF』は『少し、不思議』の略」というのがある。SF映画「her/世界でひとつの彼女」(2013年、スパイク・ジョーンズ監督、ホアキン・フェニックスら出演)は、ありふれた日常と地続きの「少し、不思議」なラブストーリーを楽しめる。

Copyright (c)2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved. Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 舞台は近未来。主人公のセオドアは、サマンサという女性の人格を持つ人工知能(AI)型の基本ソフト(OS)を購入する。機知に富んだ彼女と会話やデートを重ねるうち、やがて恋人関係になってしまう。しかし、肉体を持たない彼女との恋愛にすれ違いが生じ始める-。

 そう遠くない未来にあり得そうな人間とAIが織りなす恋愛模様を、両者の会話を軸にしてファンタジックに描いている。

Copyright (c)2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved. Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 学習能力を持つAIが急速に人間の感情を理解していく様子を、2人の言葉のやりとりを通して描写する一種の会話劇として展開する。感情的に真っさらなAIが人を愛することで感じ始める喜びと苦しみ。私たちが当たり前だと思っている感情という形のないものを、AIを素材にして巧みに浮き彫りにしている。

 サマンサ役は「アベンジャーズ」シリーズで世界最強の女スパイ役だったスカーレット・ヨハンソンが演じた。同シリーズでの華麗なアクション演技から一転、次第に人間らしい感情をあらわにしていくAIの戸惑いを抑えの効いた声だけの演技で見事に表現。ローマ国際映画祭で史上初となる声のみの出演で主演女優賞に輝いた。(記者A)

 【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。

 

ブルーレイ版2381円/DVD版1429円(税抜き、発売元 アスミック・エース、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント/販売元ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)