再生可能エネルギーはどのくらい必要なのか。この数字が今、大きく動こうとしている。

 経済産業省は2030年度の電源構成の計画について、再エネの割合を「36~38%」とする方向で検討を進めている。18年に策定した今の目標は「30年度に22~24%」。19年度実績の約18%と比べると新たな目標値は倍増となる。

 背景には、脱炭素社会という世界的な潮流がある。菅義偉首相が4月、30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減するとの目標を打ち出し、一気に加速させる必要が出てきたためだ。電源構成は今夏改定されるエネルギー基本計画の根幹となる。ただ実現は相当厳しいのが現状だ。

 50年に脱炭素社会を実現させるためのシナリオを11年から公表している世界自然保護基金(WWF)ジャパン(東京)によると、現在日本国内で約440万キロワット(20年9月時点)の風力発電の導入量を、脱炭素のためには約35倍の1億5295万キロワットまで増やさなければならないという。しかもこれは、太陽光やバイオマス発電なども大幅に増え、省エネルギーが全国で劇的に進んでいるとの前提つき。状況によっては、シナリオよりもさらに多くの風力発電が求められる。

 風力発電整備の圧倒的加速が指摘される一方、徳島県内で浮上した近年の計画の経緯を見る限り、陸上での風車の建設は相当困難では、と感じる現状がある。

 県内植物研究の第一人者、木下覺さん(79)=県植物誌研究会会長、鳴門市北灘町粟田=は風車建設が計画される海陽町の山間部を4月中旬に踏査した。結果、県内で未確認の可能性があるミツバツツジ類を見つけたという。現在、詳細に調査中で「県内の隅々まで植生の把握が行われているわけではなく、豊かな生態系の残る場所は調べるほど、貴重な発見の可能性がある」と話す。それゆえ、環境影響評価(アセスメント)段階での緻密な調査が重要になると指摘する。

 風車が立つ尾根沿いだけでなく、半径が約50メートルもある羽根など、風車の大型資材を運ぶための作業道整備も必要で、自然に与える影響は決して小さくない。

 こうした不安に加え、地方での風力発電整備への反発が強い理由がまだある。「都会のエネルギー事業者が収益のために地方の自然を犠牲にしている。原子力発電と同じ構図」―。住民たちが拭い去ることのできない思いだ。

 那賀町、海陽町、高知県馬路村の一帯で風車建設を計画しているJAG国際エナジー(東京)と、美馬、神山、那賀3市町の境にある天神丸と高城山の周辺で建設を一時、計画していたオリックス(東京)の両社に「風力発電の普及にとって重要な要素」を問うと、そろって挙げたキーワードがあった。

 「ゾーニング」

 風車の適地かどうかを、関係者があらかじめ決めておく手法だ。この重要性を早くから指摘してきたWWFジャパンは14年に鳴門市で地元関係者とゾーニングを実践している。

 ゾーニングとはどういうものか。自然は守られるのか。風力発電、そして脱炭素の命運を握るキーワードとして重要度が増している。