虎に襲われた狐が言う。「食らおうなんてとんでもない。私は神から百獣の王に任命されている。うそだと思うのなら、ついてくればいい。みんな逃げだすから」
果たして、その通りになり、虎はなるほどと感心した。獣たちが自分を恐れて逃げたのにも気づかずに。「虎の威を借る狐」のたとえは、古代中国の策略集「戦国策」に出てくる
加計学園の獣医学部新設を巡る愛媛県文書に記されていた学園理事長と首相の面会は、実際にはなかったのだという。そんな内容のファクスを学園側は報道機関に送りつけ、衆参両院の集中審議でも首相が全否定した
にわかには信じられないが、それが本当なら、これはこれで大問題だ。学園は、首相のお墨付きという虚偽の事実を錦の御旗に、行政を動かし、県市から計93億円もの補助金を得ることになったのである
常識的には記者会見を開き、相応の人が釈明する必要がある。一点の曇りもないはずだから、学園理事長も堂々と持論を述べればいい
狐と通じているならいざ知らず、戦国策の虎なら、だまされたと気づいた時点で怒り狂うに違いない。名前を使われたというこちらの虎は、「私は常に平然としている」そうである。加計、森友問題が一つ明らかにしたのは、その威を借りようとする者のあまりの多さだ。平然としている場合か。