徳島市議会は10日、市が8月に主催する阿波踊りの事業費9620万円を計上した2021年度一般会計補正予算(累計額1051億7150万円)を賛成多数で可決した。宮内春雄議長を除く29人で採決し、賛成18人、反対11人だった(記事の最後に賛成・反対議員のリスト)。

 採決に先立ち、踊りの開催に反対する自民党市議団の2人が質問した。山本武生氏は今夏の阿波踊りを「新型コロナウイルスのワクチン接種が完了前に、最大1億円の税金で徳島市主催で開催する通常ではない阿波踊り」と表現し、開催の目的や判断基準、開催後に想定される感染状況、市民の意向調査の有無を尋ねた。内藤佐和子市長は「市民活動(である阿波踊り)の支援も行う必要がある」と述べ、「阿波踊りの伝統を未来に継承するため、感染状況を見極めながら開催判断をする」と答えるにとどめた。玉野勝彦氏は市中の人出予想と感染が拡大した場合の主催者責任について質問。鈴田善美経済部長は、前夜祭と選抜阿波おどりの開催に加えて藍場浜演舞場やおどり広場などを設置する「モデルA」の場合、想定している来場者数は約2万2千人だと明らかにした。会場外の人出については「想定しにくい」として具体的な数字を示さなかった。主催者責任については「感染対策を徹底したい」と言及を避けた。

 主なやりとりは次の通り。

開会日に阿波踊り事業費を先議した徳島市議会

山本武生氏(自民)「昨年のネクストモデルをどう生かし、どう世界に発信したのか」

 まず、昨年実施したネクストモデルの検証について伺う。12月議会の私の質問への答弁で、観客、踊り手の皆さんやスタッフの意見を基に本イベントを検証し、来年度に反映するとのことだった。観客、踊り手の皆さんやスタッフからどのような方法で意見集約したのか。どんな意見があったのか。また、昨年の発言だが、「来年度の開催に向け、安心安全な阿波踊りのモデルを構築し、阿波踊りの本場として全国から注目されるよう、魅力を全国、さらには世界に発信したいと考えている」との答弁があった。「安心安全な阿波踊り」とは、どのようなモデルを構築したのか。示された案では少々足りないような気がするのでもう少し丁寧な説明をお願いしたい。また、これまでに全国、さらに世界に向けてどのような発信をしてきたのかについてもお答えください。

 

鈴田善美経済部長 「観客退場方法など改善。魅力発信は広報とくしま、市HPなど活用」

 昨年は4日間が全て中止となった。感染症対策の検証を兼ね、昨年11月に2日間、藍場浜公園で実証イベントを開催した。主な対策は、観客同士の距離、踊り手と観客の距離、密集を避けた会場レイアウト設計、観客の入場前の検温、体調チェックを実施した。接触リスク低減のためのデジタルチケットを試験導入。踊り手やスタッフにはマニュアルに基づく健康管理や移動、待機、演出方法の検証をした。ネクストモデル実施後には、踊り団体との意見交換や観客へのアンケートから検証した。観客の退場方法、アルコール消毒場所の増設、設置場所の検討など、改善方法を加え、今回の事業計画に反映させた。

 今回の阿波踊りの開催には参加するすべての人に、準備段階から体調管理など感染症対策を徹底してもらうことが重要となる。感染症対策実施マニュアルを今月下旬を目処に改訂し、周知徹底を図る。

 魅力発信については、実証イベント当日の写真を広報とくしまや市HP、インターネット動画サイトに掲載し、広く周知を図ってきた。

 

山本氏 「昨年は4月に中止決定。今年は市民の健康や命をどう考えているのか」

 求めたものには足りないが、答弁をいただいたので続ける。

 昨年の阿波踊りは4月21日の記者会見で中止の発表があった。その判断基準について伺う。会見の中で市長は中止理由として「感染者の確認により、今後感染者が急増するかもしれないという市民の危機感を考える」と述べている。記者との質疑応答の中、実行委員会への(中止)要請としては「全国で緊急事態宣言が出ていることで全国的にイベントの中止が出ていることをすべて鑑みての要請だ」とした。「中止しても自然発生して踊る人が出てくる」と問われると、市長は「個人的には踊らないことを要請していこうと思う」と答弁している。経済対策(代替案)について問われると、「現時点では何も決めていない状況。阿波踊りの中止ということだけをひとまず、本日発表した」とのことだった。昨年4月21日のこと。確かに早期の判断が求められる中、このような発言はあり得るのかもしれない。

 しかし、本市の阿波踊りは本市の宝で、最大の観光資源だ。戦後初の中止の判断に至るには、少なくとも市幹部との協議、実行委や事業体など関係者との協議も重ねた上で、一定の基準を持って判断するのが一般的だと思う。記者会見の質疑応答を見る限り、そうではないようだ。一実行委員である市長が、実行委に中止を要請している。その際の徳島市長としての判断を答えてください。

 本年4月27日の会見で、市長は「2年連続中止と現時点で決めると連員のモチベーション低下だけでなく、いろいろな人の阿波踊りへの期待がある。ギリギリまで開催するという姿勢を打ち出したいと思っている」と発言している。昨年の発言内容とは大きく異なる。

 市民の健康と生命を連員のモチベーション低下と天秤にかけているかのような発言に聞こえる。行政は市民の生命と財産を守るのが最も大切な役割だと思うが、連員のモチベーションと市民の健康や命を同等と考えるのであれば、市長の質として問題があると思う。この発言の真意を説明ください。

⇨ 徳島市の阿波踊り「4日間全て」中止 戦後初

 

内藤佐和子市長 「去年はコロナに知見無く手探り。今年は状況が違う」

 昨年の中止については、世界で感染が拡大し、日本でも4月に緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大される中、4月21日に徳島市内で初めての感染者確認を受け、同日、阿波おどり実行委に対し、開催中止の要請をした。その後、実行委が全会一致で中止を決めた。

 市長就任前から「どうするのか」という声をたくさん聞いていた。21日より前の段階で、「ゴールデンウイーク前には決めてほしい」という話もあった。ほかのイベントも軒並み中止となり、今のようにコロナへの知見もほとんどない。みんな手探りで動いていた。オリンピックが延期になり、さまざまなスポーツイベントが中止や延期となる中での、実行委全会一致での中止はその時点ではおおむね周囲に理解を得られていたと考える。今は対策を取りながら、Jリーグやプロ野球等の試合も行われている。去年とは少し状況が違うように思う。もちろん市民の健康は一番に考えている。中止までのモデルも想定しているのが現状だ。

 

山本氏 「ワクチン接種完了前に1億円の血税を投入して開催する。目的や開催後想定する感染状況は。市民の意見は調べたか」

 本年度の阿波踊りを異例のかたちで開催するということは、阿波踊りブランドの低下を招くという危惧もある。開催するなら、集客のためにもっと早い時期に旅行会社や団体などへのイベント広報がなされて開催されるべきだ。これから最大1億円近くの血税を投入して開催する理由を、市民に説明する必要がある。鳴門の阿波踊りは中止を早々と決定した。祇園祭も神事のみで、行進は中止されるそうだ。

 8月11日の前夜祭から15日までの開催なら、おそらくワクチン接種が完了していない中での阿波踊りになる。発出中の緊急事態宣言は6月20日で解除になることを期待はしているが、8月にどのような状況になるかは不明だ。沖縄県の感染状況をニュース等で見ると、変異株の感染拡大が起き、保育所や小中学校でのクラスターも発生しているとのことだ。

 これらを考えると、普通は中止する。どうしても開催するなら、主催責任者の市長は市民に理由を、市民が納得するように説明する義務がある。とくしまアラートだけではなく、昨年の中止との整合性も含め、どのような判断基準で開催するのか。規模を縮小し、例年とは異なる開催をすることにどんな目的があるのか。どのような成果があるのか。開催後、どのような感染状況になるのか。今年の阿波踊り開催について、市民の意見はどのようなものなのかを調査したのか。市民に分かりやすく説明していただきたい。

 ワクチン接種が完了する前であろう時期に最大1億円の血税を使い、実施を予定している通常とは異なる阿波踊りの開催について。開催に舵を切った。全国から観客が来県し、市中に人流が増加することも含め、判断基準を市民が納得するように説明をお願いする。

 例年、この時期に聞こえる練習の太鼓や鉦(かね)の音はあまり聞こえない。大変寂しい気持ちはある。多くの市民は感染拡大防止のため、我慢し、耐え忍んでいる。1日も早いワクチン接種の完了、コロナのない生活が1日も早く訪れることを願うばかりだ。

 通常ではない阿波踊りの開催について答弁をいただき、質問を終える。

 

内藤市長 「未来に継承するため、2年連続の中止を避けるために計画。感染状況を見極め、開催判断する」

 ワクチン接種についてはコロナ収束に向け、市民の安心安全確保のため、感染症のまん延防止を図り、重症者等の発生をできる限り減らす有効な手段としてその重要性については認識している。一方で、行政として感染拡大のリスクをできる限り抑えながら市民活動の支援や経済活性化を並行して行う必要がある。徳島が世界に誇る伝統文化の阿波踊りの灯を絶やすことなく、その伝統を次世代に受け継ぎ、未来へ継承するために、2年連続の中止を避けるために計画した。なお、開催判断、規模については市民の安心安全を最優先にとくしまアラートの発動状況や全国の緊急事態宣言の状況等を見極め、判断をしたい。

 今後も市民にできるだけ情報発信をしたい。

 

玉野勝彦氏(自民)「開催規模別の人出予測は。観客ら以外の市中の人出についても」

 8月11日の前夜祭、12日から15日まで4日間の阿波踊り事業の開催が議案として上程された。

 ワクチン接種が思いのほか進んでいない中、徳島市が主催する事業。徳島のここ数日の感染状況は落ち着いているが、全国ではコロナ感染が続く。東京ではインド型変異株のクラスターが発生したとの報道もある。本県の昨年の感染状況の推移を見ると、7月から8月にかけて感染者数が増えていることが分かる。大学などの夏休み、企業の夏季休暇に伴い帰省や県外に出掛けることが増えて感染が広まったと推測される。そのようなことが本年度も推測される中、モデルAからC、中止という開催規模が示されている。各モデル別の人出の予測を教えてください。観客や踊り手、スタッフ以外に市中に出てくるであろうという人出も分かれば教えてください。

 

鈴田経済部長 「モデルAで約2万2000人。会場外の人出は想定しにくい」

 今夏の阿波踊りについては、今年4月に実施した連へのアンケート、ネクストモデルの検証結果などを踏まえ、従来4カ所あった有料演舞場を藍場浜の1カ所にした。観客をはじめ、踊り手、スタッフ等の安心安全を最優先に、感染症対策などに配慮した会場に限定した縮小分散型での開催を予定している。期間中における会場への来場者数の見込みは、モデルAで約2万2000人、Bで約6000人、Cは無観客となる。モデルAは藍場浜演舞場やおどり広場、おどりステージ等を開設する。会場周辺の人出については想定しにくい。密集や雑踏事故の恐れがあるので事前に周知を図る。警備スタッフの増員による注意喚起と、関係機関との連携を図りながら、安全対策を徹底したい。

 

玉野氏 「市主催で開催し、感染拡大した場合の責任をどう考えるのか」

 モデルAでは2万2000人、Bで6000人、Cは無観客ということだった、そのほか、市中に出てくる人の予測はできないとのこと。観客、踊り手、スタッフには感染対策をするが、その他の市中に出てきた方については自己責任ということか。この阿波踊り開催で感染拡大が起きた場合、主催者として市中に人を集めた責任が出てくると思う。先日の産業交通委員会で森井議員による「行政が全面的に実施する祭りが全国にあるか」という質問に対し、「現時点では見当たる事例がない」との答弁があったようだ。

 このように行政主導で人を寄せるということは民間による事業と異なり、参加した方の自己責任では済まされない。市民団体のアンケートでは8割が「開催すべきではない」と答えた。呼び掛けた阿波踊り連の8割は不参加。このような市民や団体の意見を参考にせず、開催を行い、市中感染を招いた場合には道義的責任が発生すると思う。主催者としての責任についてどのように考えているのか。

⇨ 徳島市主催の阿波踊り、8割が開催に否定的 市民団体がウェブ調査

 

鈴田経済部長 「安全に配慮することが求められる。感染対策を徹底したい」

 阿波踊り開催に当たって、主催者として参加者の健康や安全に配慮してイベントを行うことが求められる。感染症対策の専門家等の意見を参考にしながら、観客、踊り手、スタッフ等の安心安全を最優先に感染防止対策を徹底したい。

 

玉野氏 「『公共の利益』のために働くのが公務員。矜持(きょうじ)を取り戻していただきたい」

 現在、時短要請や外出自粛で感染状況は落ち着きが見られる。しかし、感染拡大が起きる可能性が高まるのは、人々の密集があるとき。踊りにより不特定多数の人出が予測され、問題となっている路上飲酒も各所で起きるかもしれない。密集が必ず起きる。徳島市として規制できないだろうと思う。

 先日から高校総体が始まった。今週末には中学総体も始まる。しかし、無観客試合で、保護者は敷地内にすらとどまることができないそうだ。中学3年生、高校3年生にとっては学生最後だが、その勇姿を見てもらうことができない。このように保護者や生徒が我慢を強いる中、徳島市主催で阿波踊りを開催し、感染状況にもよるが、観客を入れることに保護者の方々は強い憤りを感じている。

 地方公務員法第30条は「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とある。ここでの「公共の利益」とは、特定の個人や階層、法人、団体等の利益ではなく、社会の成員すべての利益のことだ。そして「公共の利益」とは感染拡大を防ぎ、ワクチン接種を進め、安心安全に暮らせる社会をつくり、1日でも早く経済活動を活性させることではないか。公務員としての矜持を取り戻していただきたい。

 今、国民の安心と安全を保証するものはワクチン接種しかない。このようなコロナ感染拡大リスクのある事業を行うより、その費用をワクチン接種拡大に充てていただきたいと強く要望する。

 

***

 

 続いて討論に入り、反対の立場から船越智子氏(共産)、賛成の立場から井上武氏(誠和会)が登壇した。船越氏は、3月末の阿波おどり実行委員会(実行委員長=内藤市長)の解散と運営事業体との一方的契約解除に疑問を呈した上で、コロナ禍の中、行政が約1億円のコロナ交付金や血税を使って感染リスクのある阿波踊りを開催することは「市民の理解を到底得られない」として反対した。井上氏は「阿波踊りをこの先50年、100年先の未来にも徳島に残していくことが、今を生きる私たちの使命」と主張し、「中止はいつでもできるが、予算は確保しておく必要がある」と述べた。要旨は次の通り。

 

船越智子氏(共産)「異例の自治体主催で、感染拡大は絶対にしてはいけない。中止すべきだ」

 事業費9620万円に反対の立場で討論する。鳴門、吉野川、貞光、池田は(阿波踊りを)中止し、うだつは月内に判断する。(高知の)よさこい、(青森の)ねぶたも中止になった。祭りやイベントが次々と中止になっている。8月のねぶたは、今年4月にあった青森県内の他の祭りで、会場ではなくその後の飲食や周辺での人の流れが活発になったと県から指摘があった。加えて8月は帰省客が集まりやすいとして、断念したと話していた。

 今回、周辺から演舞場が見えないよう立てるついたてと、増員された警備員の予算が追加された。同様の雑踏対策を考えていたよさこいは、物々しい雰囲気になり、踊り子と観客が満足するのは難しいとして中止した。鳴門や池田の阿波踊りは生活圏での開催なので感染対策は厳しい。規模を縮小し、消毒を徹底して果たして経済効果はあるのか。一番に連を支援する地域の人の暮らしと健康を考えると開催は難しいなどと言っていた。「いけだ阿波おどり」は6月1日、三好市長が中止を発表し、「来年に希望を持てる、違ったかたちのにぎわいづくりを模索している」とのことだった。人の流れが予測できない中、イベントの中止が相次ぐ中、徳島市は早々とやることを打ち出し、開催に突き進んでいる。特に今回は異例の自治体主催で、感染拡大は絶対にできないし、してはいけない。この夏の阿波踊りは中止すべきだ。

 徳島大の東先生は、第3回阿波おどりネットワーク会議に感染対策の専門委員として参加し、「濃厚接触の定義は変わっていない。双方マスクなしに1メートル以内の距離で15分以上接触があれば、濃厚接触。ただ、変異株は感染しやすくなっている。『やる』と決められたこの話し合いの中では、現実的に考えて、踊り手のマスクは熱中症のリスクが高いのでしなくてもよい。そうすると、掛け声を対面にならないようにするなど練習のときからやっていただいていると思う。客に向かって発声がないように前を向いてする、などが必要。待機中はマスクなしで話をすると感染リスクが生まれるので工夫が必要」と発言していた。

⇨ 徳島市「検討中」繰り返す 第3回阿波おどりネットワーク会議委員発言要旨  

 また、委員から「飲食を伴う露店は今回は遠慮してほしい」という声もあった。(別の委員の代理出席者からの)「公園をお祭りエリアにして入り口、出口を1カ所に決め、人の流れを固定してスタッフを張り付けて、手指消毒もしながらエリアを確保する。東新町で区画を区切って、店を出したイベントのようなことが可能か」との質問には、東先生は「人を配置し、間隔が保てる。食べ物を速やかに提供する。他人とはしっかりディスタンスをとれる1区画が設けられる。そうできるなら、理論的には一つの案なのかと思う」と答えていた。

 NHKでも第4波の変異株は非常に感染しやすく、1メートルの距離で15分以内の接触でも感染が広がる可能性があること、誰かが持ち込むと全員がかかること、若年層が重症化しやすいこと、重症化のスピードが非常に速いこと、などの特徴が報じられていた。昨日の徳島新聞では、京都大の感染症疫学を研究する西浦教授のチームが「緊急事態宣言を今月20日で解除した場合、ワクチン接種が進んでいても東京では感染が拡大し、8月に再び緊急事態宣言が避けられない恐れがある」と試算をまとめ、厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の会合で報告したという報道があった。

 昨年の実証実験の想定とは大きく違っている。市民の血税を使って、感染リスクを気にしながら公園で飲食をする。一方で、公園の外は公道ですぐに生活圏がある。周囲の方には「密」になるので立ち止まっての飲食を避けるよう規制を呼び掛けるのか。そんな環境で飲食が楽しめるとは思わない。そもそも危険を冒して、お金をかけて、露店を出しての飲食を今試す必要があるのか。青森県のガイドラインでは、イベントの飲食についてもイベント後の飲食店での会食についても規制があるそうだ。

 今回の開催については、委員や踊り関係者でも賛否が大きく分かれている。市民団体のアンケートでは回答者の8割が否定的。開催希望はわずか1割強。市長は「何としても開催することで次の世代に受け継ぎたい」と言うが、一体なぜ、何のために、コロナ対策費や市民の血税約1億円を使って開催するのか。

 LED城もコロナ対策費2000万円が充てられ、全国で「この使い道、おかしくないのか」と有名になった。ネットワーク会議の議事録を読んでいると、コロナでバイト先がなくなり毎日モヤシを食べてつないだと言った学生や、職を失い家賃に困る人がこれを目にしたらどんな思いで受け止めるのか、そういった市民県民を励ませるのか、大きな疑問が湧いてきた。困っている市民のためにこのお金は使うべきだ。

⇨ コロナ交付金2000万円でのイルミに批判「他に使い道ある」 市長は反論「阿波踊り発信に必要」

 今回は警備スタッフも大幅に増やすというが、そうなれば今度はスタッフも「密」になりかねない。踊り子も、演舞の前後は「密」になりやすい。よほど管理、指示できる人を全体に配置しなければ「密」が避けられないという印象だ。検証した昨年11月でも、踊り終えた踊り子は汗だくで息が上がっていた。スムーズな移動がなければ、マスクなしで走り終えた状態で感染リスクが非常に高まる。スタッフや連の皆さんは水や弁当の飲食も伴う。移動のためのエレベーターの中など特に「密」が避けられない。

 大きなイベントになるほど人の流れが生まれる。雑踏は予測できない。関西や関東からも11連が参加予定。ねぶたの事務局が言うように、踊り期間中は夏休みで帰省客や観光客ら人の流れは多くなる。夏の踊り込みはマスクを取らないと熱中症になる。今回、参加者にワクチン接種の義務化はしない。PCR検査の予算化もない。命を守り、感染拡大しないためには中止しかない。参加連は呼び掛けた連の2割の75連。(参加しない連は)人の流れが起き、感染拡大することが怖いのではないか。

 市長は「踊りに税金を使わない」と言って、5年契約していた事業体との契約を2年で解除した。昨年4月27日、内藤市長は応分の負担をする方向で協議検討する旨を発言していた。昨年6月の産交委員会でも(中止になった)昨年の阿波踊り準備経費について報告があり、「やむを得ない事情が発生した場合の納付金の変更や、不可抗力による費用等の負担に関する規定を、実行委と事業体が締結している。今回のコロナによる影響について協議に対象とすることを定めたため、費用分担の協議を行う必要がある」とし、「協議中」との報告があった。

 事業体は中止決定した昨年4月までの間で、チケットの事前販売や広報のHP作成もしている。桟敷保管庫代も含めて2100万円の経費が発生した。しかし、実行委は「一切負担しない」と事業体に協議や合意なく通告した。おまけに固定納付金500万円も「通常通り払え」というものだった。

⇨ 阿波おどり実行委解散 事業体と契約解除 

 3月には指定管理者として徳島市が事業委託しているロープウエーや紺屋町、新町、駅前西の駐車所はコロナの影響で減収したとして固定費を減免し、市がそれを補塡(ほてん)したと報告があった。世界的なコロナ感染拡大の中、事業体からの費用分担の協議の申し出に対し、実行委は直接協議も合意もせず、一方的に事務局から費用負担を一切しないのは、実行委と事業体が結んだ基本契約35条(納付金の変更)、41条(不可抗力による費用等の負担)にも反する。

 その上、突然契約を打ち切る。徳島の一大イベントである阿波踊りの信頼を大きく損ねたのではないか。実行委事務局の徳島市は「赤字補填に税金は投入できない」と言い、市長は「税金は使えない」と言い切り、キョードー東京に減免措置をしなかった。それなのになぜ、9620万円もの税金で(予算が)組めるのか。市民が納得できないのは当たり前だ。なぜキョードー東京の事業にだけ市民の税金が使えないのか、大きな疑問が残る。

 徳島新聞の「読者の手紙」には、「運営を民間中心に行う体制は、それまでの赤字体質からの転換を図るなど、それなりの理由と意味があった。それを十分に検証することもなく、内藤市長の一方的な考えで廃止したのはあまりに短絡的。委員会は運営方針を決定するなど形骸化していたように思えない。県外者の本県に対するイメージ悪化が心配」などと投稿があった。率直な市民の声だと思う。

 2019年に阿波踊り改革のため、前市政が導入した民間委託を提言、検証した会議の委員を務めた本家大名連の清水連長に話を聞いた。「突然の実行委員会の解散と事業体との契約解除で、4億3千600万円もの(累積)赤字を生むような元の体制に戻るのではないか」と大変危惧していた。「今後の主催の方法を決める有識者会議にはぜひともマスコミなどを入れ、ガラス張りで検討されるべきだ。収支や運営、要項などをガラス張りにし、単年度で決算し、検討し、次の年度に生かす。赤字が出たら誰が補塡するのか。もっとスリムで、多くの市民が納得できる運営や説明が必要だと言っていた。今後の踊りについて、市民県民に愛される時代にあったものを毎年考えるべきだ」ともおっしゃっていた。私は元のもくあみにならないガラス張りの運営が求められていると改めて感じた。

 本来なら今年度は事業体が中心となり、実行委と共に工夫を重ねるべきだった。「形骸化していた」と(市長が)言う実行委は、キョードー東京に声も掛けず、検証イベントなどを次々と決めて実行した。

 実行委員長だった市長は、解散直後から「何としても開催する」と夏の阿波踊り開催に前のめりになっている。「何としても開催したい」という思いがあるなら、なぜ、その思いを事業体や実行委や議会や市民と共有する努力をしなかったのか。突然の解散と開催の強行に、多くの市民は納得していない。

 今日、採決しようとしているこの夏の阿波踊りは異例の市の主催。約1億円ものコロナ対策費や市民の血税をつぎ込む事業だ。キョードー東京は老舗の大手のイベント事業者。プロの運営のノウハウをなぜ学ばなかったのか。話し合ってさえいれば、この夏、1億円もの税金を投入する必要はなかったはずだ。実行委員長をしていた市長は契約解除した責任を取るべきだ。行政が約1億円のコロナ対策費や血税を使うことは、市民の理解を到底得られない。9620万円の予算には反対だ。

 最後に、(内藤市長が見たというNHKの)学生の踊りについての番組を私も見た。丁寧な構成で観客を魅了させようと一つになり、輝いていた。阿波踊りは集団での演舞で観客を魅了する。躍動感のある男踊りも魅力。声のタイミングで踊りが変化していく。徳島大の東先生の言うよう、1、2メートル距離をあけ、対面で客席への声掛けをしないなら、これらの演舞はできない。自由に踊ることも困難。感染症と熱中症の大きな危険に踊り子をさらしてまで行政は絶対にやるべきではない。まずは、未来を担う若い世代の命を守り抜くことが一番だ。

 議員の皆さんには反対をお願いする。

 

井上武氏(誠和会)「中止はいつでもできる。感染対策を講じた開催で、市民の誇りや元気を取り戻し、次世代へ継承、地域経済の発展が進むと期待」

 賛成の立場から討論する。

 阿波踊りには400年を超える歴史があり、長く市民県民に受け継がれ、現在に至る。北は北海道から南は長崎まで60を超える地域で大会がある。「阿波踊りと言えば徳島」と認知されている。市民にとって阿波踊りは地域の誇りであり、宝であるとともに、今や世界の阿波踊りと称賛されている。毎年4月に開催される「はな・はる・フェスタ」を皮切りに、阿波踊りを通じて地域や気の合う仲間が集まり、ぞめきのリズムとともに、本番に向けた踊り手の熱心な練習が行われる。

 8月12日の阿波踊り本番となれば多くの観光客が全国から訪れ、市内はぞめき一色になる。15日を過ぎれば徳島の夏の終わりと感じる。そんな風景が繰り返されるのが当たり前と感じていた。しかしコロナの影響で昨年の阿波踊りが戦後初めて4日間中止となった。市民の多くが阿波踊りのないぞめきの聞こえない一年に寂しさや物足りなさを感じたと思う。市民にとって阿波踊りは自己表現の場だけでなく、地域や仲間とのつながり、まちづくり、コミュニティの場。またそれを支える家族や企業など多くの皆さんが関わる。このように阿波踊りは地域そのものであり、市民の誇りや、地域を支えたものの中でもとりわけ大きな役割を果たしてきた。伝統や文化を絶やしてはならない。次の世代に受け継ぎ、この先50年、100年先の未来にも徳島に残していくことが、今を生きる私たちの使命だと考える。

 今年の開催には市民の安全安心を最優先に、感染状況を慎重に見極める必要があると思うが、今回審議している開催事業費においては雑踏対策での警備スタッフの増員など感染対策を強化し、従来より規模を縮小した分散型での開催を計画している。感染状況に応じたモデルAからC、あるいは中止の四つの案を設定。とくしまアラートや全国の感染状況を踏まえ、総合的に判断を行うとしていることも、コロナ下のイベント開催を行う上で必要なプロセスと理解する。

 今、コロナで日本全体が暗い様相ばかりだが、このような状況の中、ただじっと我慢をするだけでは何も生み出すことはできないと思う。一歩でも少しずつ前に進む必要がある。コロナに重点を置くのは行政としてもちろんであるが、その上で市民や地域経済にどうしたら活力を与えることができるのかを並行して考える必要がある。

 午前の討論で、反対の意見があった。「何が何でも開催する」とは言っていない。もう一度繰り返すが、感染対策を強化し、規模を縮小した分散型での開催を計画しており、感染状況に応じたモデルABC、中止もある。とくしまアラートや全国の感染状況を踏まえ、総合的に開催判断を行うということ。

 中止の場合は状況判断ですぐにできるが、予算についてはあらかじめ決めておかないといけない。阿波踊りを万全の感染対策を講じてできることで、市民の誇りや元気を取り戻し、次世代への阿波踊りの継承、地域経済の発展がより一層進むことを心より期待して、賛同をお願いする。

 

阿波踊りの開催事業費を計上した2021年度一般会計補正予算案への賛否

 *宮内春雄議長を除く

 【賛成】18人

 武知浩之、加村祐志、本田泰広、梯学、春田洋、森本聖子(以上朋友会)土井昭一、藤田真由美、明石和之、岸本和代、黒下広宣(以上公明)佐々木昌也、岡孝治、黒田達哉(以上徳島活性会議)齋藤智彦、岡南均(以上至誠会)中西裕一、井上武(以上誠和会)

 【反対】11人

 加戸悟、見田治、渡邊亜由美、船越智子、古田美知代(以上共産)須見矩明、美馬秀夫、森井嘉一、山本武生、玉野勝彦(以上自民)増田秀司(無所属)