防護服を着て患者のケアに当たる職員=5月31日、徳島市のそよかぜ病院(病院提供)

 大型連休真っただ中の5月3日、徳島市名東町のそよかぜ病院は緊迫感に包まれていた。

 職員と患者計27人の新型コロナウイルス感染が判明。院内でクラスター(感染者集団)が発生した。感染しなかった職員は院内を消毒したり、感染者の活動領域を分ける「ゾーニング」を行ったりと、対応に追われた。

 「戦場のようだった」。病院を運営する医療法人・清流会の久次米均理事長はこう振り返る。「対策や訓練は実施していたが、これだけの感染者が出るのは想定外だった。人手は失われ、限界を感じた」

 この日の県の発表では、そよかぜ病院の関係者を含む60人の新規感染が明らかとなった。1日当たりの感染者数としては過去最多だった。

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 始まりは職員1人が発熱などの症状を訴えたことだった。5月1日にPCR検査をしたところ、感染が判明。職員が勤務していたフロアの患者らを検査すると2日夜、新たに職員6人、患者20人が陽性と分かった。

 院内には精神疾患や認知症の入院患者が多い。マスク着用や消毒の徹底、他の患者との接触禁止を促すのはそもそも難しい。体調が悪化しても申告できず、症状がつかみにくい人もいた。

 このため病院は感染防止対策に敏感だった。職員に対しては1日複数回の検温や、会食の自粛を呼び掛けていた。しかしウイルスは院内で急速に広がった。

 職員の感染が判明したのを受け濃厚接触者らが自宅待機となり、一時は40人以上の職員が出勤できなくなった。患者のケアと院内の消毒を並行して実施することにしたものの、深刻な人手不足に陥った。

 病院には感染症の専門医がおらず、新型コロナ治療の経験もない。感染した患者の多くは転院が難しく、院内で治療を施すしかなかった。院内を徘徊(はいかい)する感染者もいた。感染拡大を早期に食い止められず、感染者の発生は23日まで続き、累計68人に上った。

 「感染者や自宅待機中の職員に電話をすると、大半から『大変な時に出勤できず申し訳ない』と伝えられた。不眠不休で仕事をする職員も多かった。みんな、いっぱいいっぱいの状況だった」。病院を運営する医療法人・清流会の久次米均理事長は言う。

 「隠す方が信頼を失う」と、病院は新規感染者の発生や詳細な情報をホームページで公開した。職員だけでなく患者のワクチン接種も市に要請し、6月中に全員の接種が完了する見通しとなった。大半の職員は現場復帰を果たし、外来診療も一部再開。18日からは入退院を含む全ての病院業務を通常通り行う。ウイルスの脅威はようやく沈静化しつつある。

 変異株がまん延した今春は、南海病院と鳴門山上病院(いずれも鳴門市)でも111人規模の関連クラスターが発生。そよかぜ病院同様、精神疾患や高齢の入院患者が多く、ひとたびウイルスの侵入を許すと、感染抑止が難しい実情が明らかになった。

 「できる限りの対応はしてきたけれど、今考えても何が正解だったのか分からない部分もある」。久次米理事長は、精神科病院はクラスターが起こりやすいとして、入院患者のワクチン接種を早期に進めるとともに、患者の受け入れ体制を整備するよう訴える。「感染対策に終わりはない」。

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 新型コロナウイルスの流行「第4波」で、県内では4、5月に感染者数が爆発的に増加した。感染拡大の影響を受けた現場で何が起こっていたのか。関係者の証言から振り返り、課題を探った。