授業の内容を端末にまとめる児童=上板町の高志小学校

 小中学生に1人1台のデジタル端末を配備する「GIGAスクール構想」。文部科学省の調査では全国の市町村など1812カ所のうち、96.5%に当たる1748カ所が2020年度内に納品を完了見込みとなっており、急ピッチで整備が進められている。徳島県内でも既に授業でデジタル端末を活用している小中学校がある中、先月、徳島市や鳴門市の学校に配布された端末のバッテリーが膨張するなど、不具合が相次いで発覚。両市教委が導入した計2万1千台余りが回収・点検されることになった。県と市や町が「共同調達」した端末でも同様の不具合が起き、両市を除く11市町で大規模な回収・点検が行われ、一部では授業での利用が中断される事態になっている。現場からは「バッテリーの膨張は危険」「なぜその端末を選んだのか」など不満の声も。新型コロナウイルス下での学習支援の一つとしても期待されているGIGAスクール構想だが、一体どうなっているのか。

 

端末購入の基準は? “3つのOS”

 そもそも端末の購入基準などはあるのだろうか。GIGAスクール構想の一環で子どもたちが使用する端末の購入は、各自治体に任されている。文科省は2019年12月、自治体が端末などをスムーズに調達できるように「標準仕様書」を提示。モデル仕様については、Microsoft Windows、Google Chrome OS、iPadOSの3種類から選択することが望ましいとしている。調達に当たっては、複数の自治体で統一することで安価に購入できるほか、教職員の異動時に操作方法を習得する手間を省くなど教員研修の効率化が図れるため、共同調達の検討を勧めている。
 徳島県では、当時の各学校での端末の利用状況やICT環境、OSの特徴、自治体の希望などを踏まえた結果、WindowsとiPadOSの2つに絞って共同調達を行うことにした。小松島、阿南、吉野川、阿波、美馬、勝浦、上勝、石井、那賀、美波、松茂、北島、板野、東みよしの14市町が共同調達に参加。徳島、鳴門、三好、神山、佐那河内、牟岐、海陽、藍住、上板、つるぎの10市町村は、それぞれで端末を購入した。

 

どの端末を使ってる? 全国的にChromeOSが最多、メーカーはアップルやレノボが多数

 


 調査会社MM総研(東京)が全1741自治体の教育委員会を対象に行った調査によると、端末の調達台数は1478自治体で748万7402台になり、このうちGoogle Chrome OS端末が327万8110台で全体の43.8%を占めた。iPadOSは28.2%、Microsoft Windowsは28.1%だった。
また、メーカー別出荷台数では1480自治体分の計749万2074台のうち、アップルが全体の28.1%で最も多かった。iPadを除くWindowsとChrome OS端末538万4139台では、レノボが28.1%を占め、続いてNECが20%、HPが9.7%、ダイナブックが8.9%、富士通が8.2%となった。※円グラフ参照。

 徳島県内ではどうだろうか。各市町村教委にOSと端末のメーカー、購入台数、利用状況を問い合わせたところ、以下のような結果になった。

 

 県は昨年7月、共同調達に伴う入札情報を広告。入札の結果、アジア合同会社(徳島市)から中国メーカー「ツーウェイ」のWindows端末を約1万5千台、四国通建徳島支店(徳島市)からiPad約9千台を購入することになり、両社は県と14市町に納品。徳島市と鳴門市は単独調達で、共同調達先と同じアジア合同会社からツーウェイの端末を購入した。

 残りの8市町村のうち、牟岐町と海陽町はiPadを選択。三好市は「Windowsと比較して検討した結果、管理しやすい」とChrome OSを、佐那河内村は「学習支援ソフトなどが使いやすい」、神山町は「小中学校のパソコン教室で使っているのがWindowsなので合わせた」との理由で、Windowsを選択。つるぎ町は「国産なので安心」、藍住町は「運用が始まってからメーカーなどのメンテナンスやサポートが受けやすい」などとして、メーカーや端末を選んだ。

 

回収・点検で多くの子どもたちが利用できず 授業での活用を順調に進める学校も

 県内ではほとんどの学校で6月までに端末の初期設定などを終わらせ、授業での運用を開始する予定だった。しかし、4月下旬、徳島市内の3校でバッテリーの膨張や変形などの不具合が起きた。5月下旬には鳴門市の中学校と県立城ノ内中等教育学校で、同様の不具合が発覚。現在は同端末を導入した県立2中学校と鳴門、小松島、吉野川、阿波、美馬、勝浦、上勝、石井、那賀、松茂、北島、東みよしの各市町の小中学校を対象に、納入業者が順次回収し、点検を行っている。
 端末を既に授業で使っていた学校もあるが、回収・点検作業で使用を一時、中断せざるを得ない状況だ。異常がない限り端末は利用できるため、回収までの間授業での利用を続けている自治体もあれば、「何かあったら怖いので使うのをやめている」という自治体もある。点検が終わり端末が戻ってくるのは8月の予定で、利用開始時期が大幅にずれ込むところも出ている。
 共同調達に参加した市町の関係者は「共同調達で仕様を満たしたものを購入したのだから仕方ない」「国の補助金の範囲内では無理がある」と一定の理解を示すものの、「聞いたこともないメーカーで驚いた。なぜ国産でないのか」「子どもたちは残念がっている」「児童生徒が安全に使えるようしっかり点検を行ってほしい」などの不満の声も上がっている。

アプリを使って内容を共有しながら意見を言い合う児童=上板町の高志小学校

 導入早々にトラブルが起きたGIGAスクール構想だが、デジタル教育を着実に進めているところもある。上板町では、昨年度中に5小中学校で端末の運用を開始。このうち、高志小学校では昨年11月から、全児童123人が端末を利用している。1人1台導入以前から、デジタル端末の活用に積極的に取り組み、6年生の社会の授業では、慣れた手つきで端末を操作する児童の姿が見られた。授業では、教育支援アプリ「ロイロノート・スクール」を使う。紙の教科書を開き、アプリ上に自分の考えを打ち込んだり写真を張ったりしてノートをとる。アプリ上で共有機能を活用すれば、各自の端末で他の児童のノートを見ることもできる。児童がクラス全員の前で発表する際は、教室の前方にある大型の液晶画面にノートを映し、児童は端末を操作してノートを拡大したりしながら発表を行う。課題やノートの提出もアプリを通じてオンラインで行っている。デジタル端末を使った授業について、小田隼大さん(12)は「今までは紙のノートを見せ合っていたけど、デジタル端末だとコロナ過でも簡単にノートを共有できて便利」と答えた。同小の中川斉史校長は「紙のノートでは限界があるが、端末を使えば人のノートや映像などを蓄積して次の授業に役立てることができる」と話した。(※授業の詳細は末尾の動画で紹介)

 導入した端末の違いによって、児童生徒の学習に影響が出てしまった。今回の事態について、県総合教育センターの担当者は「一部の機器の不具合により、児童生徒のタブレット端末の利用が一時的に中断してしまったことは残念に思う。今後このようなことが起こらないよう、業者には点検作業を着実に行っていただきたい。児童生徒が充実した学習活動に取り組めるよう引き続き対応したい」と話している。

 

「選定過程が不透明」「充電時には注意が必要」 専門家指摘

端末を操作しながら説明する林准教授=徳島市の徳島文理大

 情報教育に詳しい徳島文理大の林向達(りん・こうたつ)准教授(50)は今回のデジタル端末の導入について「端末の選定の過程が不透明で、行政の動きが見えづらかった」と指摘する。「なぜ最初からOSを2つに絞ったのか。県内にはICT教育アドバイザーなど詳しい人がたくさんいるので、外部のメンバーを入れてオープンに検討すべきだったのでは」と話す。

 林准教授は、今回県が共同調達した中国製の端末を自身で購入し実際に操作性などを確認したところ、充電の際に注意が必要だという。この端末には「USB Type-C」と呼ばれる上下左右対称な形の端子が使われている。スマートフォンやパソコンなどに広く使われており、形が同じであれば、専用の充電器でなくとも同端末に差し込むことはできるが、出力する電圧電流が異なるため充電はできない。反対に同端末専用の充電器を他の機器に使用した場合は、供給される電力が大きく故障につながる可能性もあるという。「家庭への端末の持ち帰りは認められているが、充電器を持ち運ぶ手間が増える。充電の際の扱いについても注意喚起すべき」と強調した。

共同調達と同じ端末とアダプター

 また通常は過充電を制御するシステムが備わっているが、今回は何らかの要因で制御できず「過充電によって不具合が起きたのかもしれない」と推測。「USB規格に沿ったものではなく、特殊なものを使っている。この端末自体はいいものだが、学校教育に入れる端末としていいのか。リスクを分かった上で購入し、きちんと情報を開示しているのか」と県の対応を疑問視する。これからのデジタル端末の活用について「選んだ端末によってはできることとできないことがある。端末に使われるのではなく、自分たちがやりたいことにどれだけ使えるか。それを子どもたちが体得し、端末に応じて活用の行方を見いだしてほしい」と助言した。

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