ポルトガル出身の文人モラエス(1854~1929年)が晩年の16年間を過ごした徳島市には墓所や旧居跡、顕彰碑などゆかりの場所が数多くある。モラエスの生涯を描いた新田次郎・藤原正彦著『孤愁-サウダーデ』を手に訪ねたい。
墓所があるのは眉山山麓の潮音寺。神戸で暮らした最愛の妻おヨネ、そのめいコハルの墓と共に、ひっそりとたたずむ。寺では命日の7月1日、NPO法人モラエス会による法要(モラエス忌)が営まれている。
潮音寺に隣接する阿波おどり会館前の広場に生誕100年モニュメント、そこから歩いて数分の新町小学校には胸像がある。伊賀町の旧居跡にも銘板と石碑が残り、周辺は「モラエス通り」と命名されている。
また眉山山頂広場には、故国・ポルトガルの方角を向いた立派な全身像が建っている。
文学資料は県立文学書道館と、市中央公民館3階のモラエス展示場で見られる。このうちモラエス展示場は、眉山山頂にあった旧モラエス館(2015年閉館)の所蔵資料や遺品などを移転したものだ。
しかし市中央公民館は、県市協調で進める県立ホールの建設予定地になっている。計画通り進めば解体される見通しで、展示場の貴重な資料も行き場を失うと懸念されている。
〈2021・7・1〉