男性が入院中に撮影した点滴を受けている自身の腕(男性提供)

 新型コロナウイルスの流行「第4波」が爆発的に広がった原因の一つが、感染力の強い変異株の主流化だ。徳島県内では英国型変異株が3月までに初確認されると、従来型との置き換わりが急速に進んだ。それまで感染しにくいとされていた若年層にも拡大。重症化が早まるなどして医療の逼迫(ひっぱく)を招いた。

 県内の40代男性会社員は4月中旬、経験のない強い喉の痛みと激しいせき、40度前後の高熱に襲われた。唾をのみ込むことすらつらく、ゼリーしか食べられない。「数日前に親知らずを抜いた影響だろうか」。そう考えて複数の病院で薬の処方を受けたが、症状は治まらなかった。

 「コロナかもしれない」。そんな考えが頭をよぎったものの、直前に県外を訪れるなどした心当たりはなく、病院でPCR検査を促されることもなかった。家族の勧めもあって検査のために病院を訪れたのは、不調を感じ始めてから5日目のこと。翌日午前に出た結果は陽性だった。

 早く治療を受けたいと考えて保健所に連絡したが、感染者が急増していた時期で対応に追われていたためか、担当者からは「少し待ってほしい」と告げられた。2時間待ったが連絡は来ない。しびれを切らした男性はコロナ病床がある病院に連絡を入れ、妻の運転する車で駆け込んだ。

 コンピューター断層撮影(CT)検査などを経て入院できると決まった。ただ、近隣の病院にはベッドの空きがなく、確保できたのは約60キロ離れた病院だった。一刻も早く向かうため救急車ではなく妻の運転する車に再び乗り込み、夕方になってようやく到着。精密検査の結果、肺炎症状があり中等症と診断された。

 入院先でやっと治療を始めたのもつかの間、男性は再びコロナの恐ろしさを思い知らされることになる。

 濃厚接触者としてPCR検査を受けた家族のうち、妻と10代の長女ら4人が感染していた。男性は自身も高熱などに苦しみながら「申し訳ない」という自責の念にさいなまれた。

 幸い、投薬治療によって症状は数日で治まり、5月初めには退院。自宅療養を経て中旬には仕事に復帰できた。家族も全員、命に別条はなかった。男性は入院生活について「病状を小まめに確認したり、優しく声を掛けたりしてくれた医師や看護師には本当に感謝している」と振り返る。

 回復した今、改めて感じているのがコロナの感染力の強さだ。「職場では機器の消毒などを徹底しており、休みの日もマスクの着用や手洗いを心掛けていた。県外との往来も控えていたし、どこで感染したのか全く分からない」。同僚に広がらなかったのがせめてもの救いだった。

 「もう少し高齢だったら命に関わっていたかもしれない。そう思うとぞっとする。もっと早く検査を受けるべきだった」。男性はそうした反省を踏まえて「コロナが疑われる症状が出た場合はすぐに検査を受ける。そうすることが自分や大切な家族の命を守ることにつながるはずだ」と力を込めた。

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 新型コロナウイルスの流行「第4波」で、県内では4、5月に感染者数が爆発的に増加した。感染拡大の影響を受けた現場で何が起こっていたのか。関係者の証言から振り返り、課題を探った。