時短要請の影響で、人通りが途絶えた繁華街=4月28日午後9時すぎ、徳島市栄町

 1日夜、徳島市中心部の繁華街に、かつてのにぎわいはなかった。

 飲食店への営業時間短縮(時短)要請が解かれて迎えた初めての夜。午後9時すぎでも半分ほどの店が電気を消したままだ。営業していても客がまばらか、全く姿が見られない店が目立つ。

 「1日3万円の徳島県の協力金がなければ店はつぶれとったかもしれん。助かった。同じように思っている店は多いんちゃうかな」

 個人で居酒屋を営む70代男性はそう語る。時短期間中は休業し、この日は久しぶりに店を開けた。客の注文を受けながら笑顔を見せつつ、「すぐに客はもんてこん(戻ってこない)わな」と先行きを案じた。

 飲食店経営者の間には、協力金を伴う時短要請を評価する意見がある一方、外出控えが進んだためさらに打撃を受けたと訴える声も上がる。

 協力金だけでは従業員の給料などの固定費を賄えず、売り上げが多い店ほど赤字幅は広がった。こうした店からは「小規模店にしか恩恵がない」「午後9時以降の営業が主体の店はどうすればいいのか」といった不満が相次いだ。

 仕入れなどを行う関連業者はさらなる苦境に陥った。休業しても協力金などの補償はない。県は時短要請で経営に打撃を受けた中小の取引業者などへ40万円(個人事業者は20万円)を上限に一時支援金を支給する施策を打ち出したものの、「焼け石に水」と捉える業者は少なくなかった。

 洋ランなどを飲食店の催しや贈答用として販売する市内の生花店は、時短要請後に売り上げが激減し、コロナ禍前の5%ほどになった。男性店主は「花屋を廃業して喫茶店でも開いた方がましだと思っていた。飲食店が苦しいのは分かるけど、行政は自営業者の実態にもっと目を配るべきだ」と憤る。

 酒類を飲食店に卸す市内の酒店では、5月の売り上げが、初の緊急事態宣言が出ていた前年同月の半分ほどに落ち込んだ。取引先の休業が相次いだためだ。男性経営者は「飲食店が良くならないと、こちらも良くならない」と話す。

 昨秋以降は国の観光支援事業「Go To トラベル」や飲食業界支援策「Go To イート」で一時的に飲食店が好況となり、売り上げはV字回復した。そんな経験を踏まえ、一度限りの支援金よりも、経済全体の活性化を促す施策を求める。

 「そのためにはワクチン接種をさらに加速させるべきだ。新型コロナ収束後はこれまで公的支援の恩恵を受けにくかったラウンジやバーにも人が流れる施策を打ち出してほしい」と男性経営者は提言する。

 感染抑止と経済維持をどう両立させるか。行政にはなお、重い課題が突きつけられている。

 県の営業時間短縮要請 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、県は4月16日から、県内の全飲食店に対し、営業を午後9時まで(酒類提供は同8時まで)にするよう要請。過去の売り上げに応じて1日当たり3万~7万5千円(4月16日~5月5日は3万~5万円)の協力金を設けた。要請は当初5月5日までの予定だったが、医療体制の逼迫(ひっぱく)などを理由に期限を2度延長し、同月末までとなった。

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 新型コロナウイルスの流行「第4波」で、県内では4、5月に感染者数が爆発的に増加した。感染拡大の影響を受けた現場で何が起こっていたのか。関係者の証言から振り返り、課題を探った。