16日の徳島市議会6月定例会の一般質問で、古田美知代氏(共産)は市の待機児童解消に向けた取り組みについて尋ねた。市によると、4月1日時点の待機児童数(暫定値)は12人で、前年同期より25人少ない。古田氏は希望施設に入れない入所保留数や定員超過数を問うたほか、県外から就職するなどした保育士に一時金を支給する事業よりも、全保育士の処遇改善につながる支援が必要だと訴えた。

 主なやり取りは次の通り。

古田美知代氏 「保育所の入所保留者数、定員超過数は」

 徳島市は昨年予定していた教育保育施設整備計画を市長の独断で、事業者に対話なく、突然中止した。保護者の皆さんから「裏切られた」との声が上がった。

 4月1日現在の、保育所入所対象者の人数、申し込み人数を答弁ください。入所保留数、定員超過数の合計もお答えください。また、「規則に従っているので定員超過は問題ない」と言うが、厚労省からの通達はいつ出たか。その後、待機児童解消に向けて厚労省は動いていると思うが、どう受け止めているか。

 

鶴澤宏明・子ども未来部長 「入所保留158人、定員超過295人の合計453人」「超過しても国の基準満たす。国も基準内での超過認める方向」

 2021年4月1日現在の保育所等入所対象者数は1万1723人。これは徳島市の0歳から5歳の未就学児の人数だ。同年4月入所の申し込み人数は6433人。特定の保育所を希望し、空きが出ることを望み、入所申請を継続している入所保留者数は、待機児童12人を含め158人。

 保護者ニーズを優先に考え、施設面積および保育士が国の基準を満たす状況の中、定員を超えて受け入れている子どもの数、定員超過数は295人。その(待機児童を含む入所保留者数と定員超過数の)合計は453人。

 定員を超えた入所に関する厚労省の通知は1998(平成10)年2月13日に、「保育所への入所の円滑化」として出ている。それまで定員を超えて入所できるのが年度途中に限られていたところ、待機児童の解消が課題となり、年度当初から可能になった。

 その後、さらなる待機児童解消に向け、厚労省は2016(平成28)年4月7日付の「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について」の通知の中、各施設で定めた定員ではなく国で定めた保育士数や、施設面積等に基づき子どもを受け入れるよう要請があった。

 さらに、この通知の中、定員を超えた場合の公定価格の減額措置について、それまで連続して2年超えれば減額されていたところ、連続する5年間に延長しており、待機児童解消に向けて国の基準を遵守することを前提に、定員を超えた子どもの受け入れをこれまで以上に認めている。

 徳島市としては保護者の希望を第一に入所の調整をしている。施設によっては定員を超えた入所となる場合もある。こうした場合も、国の基準を遵守するとともに、4歳、5歳児クラスの保育士の加配について市単独の助成制度を設けることで、さらなる保育環境の向上に取り組んでいる。

 

古田氏「コロナ下、国は小中学校は学級人数を減らす方針で徳島市は逆行。昨年中止にした施設整備を実施していた場合は」「1人しか応募ない保育士UIJターンより、全保育士の処遇改善を」

 国の基準の待機児童数は減り、市長は施策が成功しているとの自慢を開会で述べたが、定員超過数が昨年の273人から今年は295人。子ども数、申し込み人数が減少する中で22人も増えている。増えた定員超過の子どもの数を足すと、昨年の待機児童数と変わらない。コロナ下でそれでいいのかを問うている。定員超過数295人と入所保留者数158人、合計で453人とのこと。待機児童解消からはほど遠い数字となっている。

 国では教育再生実行会議が、コロナ収束後の新たな学びに関する提言をまとめ、公立小学校で段階的に実施している35人学級については、効果を検証した上で、中学校を含め、望ましい指導体制を検討するよう首相に提出した。

 感染予防として社会的距離の確保が求められる中、従来の学級編成では密集を避けられないことが問題となり、文科省は2021年度の予算編成で「小中学校全学年の段階的な30人学級化」を要求している。財務省の抵抗で「段階的な35人学級編成」となった。しかし、減らしていく方向だ。

 ところが徳島市は国と逆行する方向で、定員の超過を認めている。保育所や幼稚園の子どもが感染する事例も出ている。定員枠を守り、さらに3密を避けるために十分な補償を行い、定員を減らす方向に進めるべきだ。

 そこで伺う。もし、昨年の計画通り教育保育施設整備計画を進めていれば、今年の4月から入所保留も定員超過も解消することができる可能性があった。このことに対してどう考えているのか、改めて見解を伺う。

 次に、保育士確保を目指し進める「UIJターン保育士応援事業」だが、1000万円の予算を付けて20人確保する目標で取り組み、今のところ申請はたった1名。ほかの業種と比べても給与が大変低く、他県と比べてさらに低い給与では一時金50万円を出しても保育士は集まらない。保育士確保のためにはしっかり支援をして、給与の底上げ、家賃補助 研修費用の上乗せなど、処遇改善しないと徳島市には来てくれないから施策を見直すよう、再三求めてきた。

 「徳島市だけでは難しい」と市長は言ったが、頑張っている市もある。千葉県船橋市では、公立私立の差を埋めるため、保育士応援の施策をしている。3点挙げると①「船橋手当」として月額4万2470円、2回の賞与分7万5820円の年額合計58万5460円を市から支給 ②家賃負担として月額6万9000円、年額合計82万8000円を補助 ③保育士になるための就学資金を月額3万円、年額36万円、4年制なら144万円支給。

 UIJターンに今年1000万円、来年1000万円といった税金の使い方ではなく、私立保育園等で働くすべての保育士の処遇改善支援とすることを求める。

 

鶴澤・子ども未来部長 「中止した施設整備を進めていても入所保留者らの解消はならず」「他業種との公平性から市単独の特定業種支援は好ましくない」

 昨年中止した教育保育施設整備費補助を進めていた場合について。保育所には定員割れしている施設が公民合わせて39施設、367人分あり、昨年度より6施設、81人増えた。また徳島市では保育士不足が続く。500人近い定員拡大につながる施設整備をそのまま進めていた場合、保育士の奪い合いが起きるだけでなく、人気ある園に子どもたちが集中することで施設の運営ができなくなると心配する多くの民間事業者の声があった。こうした事業者の声や保護者のニーズを最優先に、入所調整をしていることを考えると、新施設を整備したとしても、入所保留や定員超過の解消には至らず、定員割れをする施設が拡大し、徳島市全体の子どもの受け入れ数が減少する可能性すらあったと考える。

 保育所の入所はできる限り、保護者の希望通りとなるよう調整するため、定員を超えた施設が発生することがある。こうした場合も国が定める施設面積や保育士数を確保できており、保育環境は維持できている。さらに、徳島市では早くから市単独事業として 国の基準より充実した保育士を配置した場合の助成制度を設けるなど、さらなる保育環境の向上にも取り組んでいる。

 本年度の待機児童数は公民合わせた保育士数を増加させたことで近年では最も少ない12人となっている。過剰な施設整備により民間事業者間で本来は必要ない競争を促すのではなく、引き続き保育士確保により待機児童の解消に取り組むことが、保護者や保育園の皆さまにとって最も良い選択であると考える。

 UIJターンではなく、保育士の処遇改善の支援を行うべきではないかという質問について。保育士として就職する動機は人によってさまざまであることから、徳島市では保育士確保のため、離職防止や労務負担の軽減など多様な方策に取り組んでおり、UIJターンは一人でも多くの保育士を県外から導く移住促進の一面もある。また保育所の運営は保育士の給与も含め、国がその運営に必要な経費を保証するという制度設計となっている。その制度の枠組みや他業種との公平性を考えれば、市単独で特定業種だけを支援することは好ましくないと考えている。

 ただ保育士の給与実態や保育士確保の必要性を踏まえ、本市においては全国市長会を通じ、国に対して保育士の処遇改善に必要な運営費が確保されるよう、毎年要望している。

藤田真由美氏(公明)「ヤングケアラーの実態把握は」  徳島市「把握は難しい」

 同日、子どもの福祉に関してはこのほか、藤田真由美氏(公明)が家族の世話や介助を担う18歳未満の「ヤングケアラー」について質問。徳島市に対して実態把握の取り組みなどを聞いた。松本賢治教育長は「プライバシー保護への意識の高まりで学校が能動的に児童生徒の状況を捉えることが難しい」「(ヤングケアラーという社会問題の認知度が低く)教職員はもとより本人ですらヤングケアラーの状態にあることを認識できていないことも考えられる」とし、把握が困難な状況を説明した。

 「啓発の推進、理解の促進が必要だ。小学生への調査も必要という声がある。徳島市も実態調査、啓発などを国に先駆けて取り組んではどうか」という藤田氏の問い掛けには「できるだけ早期に情報提供や啓発をしたい」「国が具体的施策をする中で、徳島市も必要な施策を確実に実施し、適切に対応する」と述べるのみだった。